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夏目房之介の「で?」

スマスマのアラン・ドロン

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スマスマにアラン・ドロンが出てた。72歳の少し手前?

意外なほど(といっちゃ失礼だが)格好よかった。いや、もちろん年齢なりにトシはとってるのだが、洒落っ気とか言葉の枯れてない枯れ具合とか、表情の美意識とか・・・・うん、あまり好きでもなかったし気にしてなかった俳優なので(ジャン・ポール・ベルモントが好きだった)、何かやっぱフランス人の成熟の仕方って、かなわねぇな、と思った。
「学校で演技を習って演技をするのがコメディアン、その役を生きるのがアクターだ」っていう役者論は、どういうことなのかよくわからないのだが、何となく面白いなと思った。
「かっこいい男とはどんな人か」という(たしかキムタクの)質問に「格好いい男が問題なんじゃない、素敵な女性こそがたいせつなんです」というようなことをいってたのが、印象に残った。こういう来歴のフランス人がいうと、有無をいわせぬ説得力がある。「とにかく、女性だよ!」ってニヤリと笑って、こんなに格好のつくじいさんになってみてぇな。

「モテる秘訣は?」というシンゴの質問に「モテる秘訣なんてない。ただ、自分の自然な魅力が出てくるようにふるまうだけだ」ってのも、この人じゃなければ、さほどの力はなかっただろう。わからないフランス語で話してるのに、胸に届いてくる。不思議なものだ。
クサナギが「落ち込んだときに、今までどうしてきたのか」というような質問をしたら「そんな暇はないんだ。世の中には好きなことができない、好きなことを仕事にできないでいる人たちがたくさんいる。僕らはしあわせなんだ。落ち込んでいる暇はないんだよ」と返していた。

言葉の意味そのものではなく、アラン・ドロンという人間の、それも70年かけた「何か」が、その言葉を伝えるんだろうなと思った。不思議と、聞いていて涙ぐんでしまった。こういうふうに、言葉をあやるつようになれたらいいな。

料理に関しては、スマスマ的番組的なアレンジを全然認めず、「おいしいけど、これはブイヤベースじゃない。ブイヤベースとは、こういうものです」とかたくなに主張していたのは、フランス人ぽくて、かえって新鮮だった。やっぱフランス人て、昔の日本の職人みたいだ。

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