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夏目房之介の「で?」

『明日の記憶』

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 洗濯と掃除以外何もない、ひさびさの日曜日の夜。
 いつものように『さんまのからくり』、『ジャンクスポーツ』を観て、ブログチェックやメールなどをやりつつ、NHKでインカ帝国のミイラの話を観て(けっこう面白かったな、「ながら」でちゃんと観てないけど)、それも終わったのでチャンネルを回していたら、テレ朝で渡辺謙がアルツになったサラリーマンをやった映画『明日の記憶』をやっていた。

 じつは先月6月、連載物の締め切りを三つも、すっかり忘れて、メールで尋ねられてはじめて書くという前代未聞の経験をしたんである。要は手帳にその分のスケジュールを入れ忘れたり、書いてあっても後回しにしたつもりでそのまま忘れたりしてたんであるが、さすがにアルツかと思ったよ。こりゃ、ちょっとやばいんじゃないか、って・・・・。こういう不安は、冗談めかしてはいても、けっこう怖いんだよ、マジで。なんだかんだいって、そういうお年頃なんだもん

当然ながら自分の中では、色々と「いいわけ」をさがす。現在進行している(ちょっと挑戦している)長い文章(新書用の25ページ構成で、本業じゃない領域)に集中したいっていうのが無意識にあって、他を無視したのかも、とかね。他にも、相当きついストレスになることを抱えてはいるし、ウツっぽくなって仕事いやいや病になってからけっこう長いしで、色々と「一時的な原因」を考えることは可能なんだけどね。

でも、半分だけ観た『明日の記憶』は、しんどいけど、それなりにいい映画だったなぁ。最後、「絶対忘れたくない」といっていた奥さんすら、ついに認識できなくなった場面、渡辺謙も樋口可南子もよかった。そこで終わる、っていうのも、かなり勇気のあるエンディングだよね。日本はポジティブなリタイア文化が戦後(あるいは近代?)失われた気がしてるんだけど、そこんとこも気になるなぁ。パーティの翌日にうっかり観ちゃう映画ではないかもしれんが(笑)。

いや、映画はよかったんだけどさ。何か、他人事でない部分があるからなー。N井氏に貸してもらったアニメ『時かけ』は、ほとんど感情移入できなかったけど、こっちは身近だもんなー。いや、それにしてもこのウツ体質は、何とかしないといかんな。生まれつきだけど。こういうのと向き合えるあいだに、向き合わないと、時すでに遅くなっちゃうかもしんないので、ちょっと方策を考えよう。

あ、最近ヘッセ『人は成熟するほど若くなる』を、書評連載でとりあげたこともあるのかな。あの本、タイトルで連想するような「空元気」の出る話じゃ全然なくて、かなりシビアに「老い」と向き合う内容なんだよね。う~ん、昨晩カラオケボックスで踊るスペースがないと文句いってた同じ人間のブログとは思えん(笑)。

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