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夏目房之介の「で?」

まとめて日記4アニメ『鉄コン筋クリート』

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4月2日(月)アニメ『鉄コン筋クリート

ふと思い立って『鉄コン筋クリート』のアニメを六本木に観にゆく。

ふむふむ、なかなかよくでてる。3DDGの世界はよく作りこんである。僕としては、白黒の質量を感じる松本大洋より押井守の『イノセンス』の世界を連想した。東京というより大阪にも近い気がするし、中洲という設定になっているので博多も連想するけど、中心から放射状に広がる道路はパリみたいだなと思った。昭和30年代の車や看板建築はたしかに昔の東京っぽいけど、あきらかにバンコックやバリの意匠も錯綜してあり、どこにもないけどありそうなエキゾチックなアジア都市の混沌っていう感じなのだ。

見終わって

トイレに入ったとき若い男性二人が話していた。

「途中で吐き気したよ。何か、焦点深度がすごく浅いじゃん。だから」

ああ、なるほど。面白い。たしかに、もっと深ければ『スパイダーマン』みたいな爽快感があったかもしれないけど、たぶん意図的に避けたのかな。

書店で本を買い、戸越に戻ってエッグで食事。そこにきたアッコとイワタ君と『鉄コン』の話をする。みんな原作も昔読み、アニメも観ていた。で、結論からいうと、

「よくできてるし面白いけど、やっぱり原作のほうが面白い」

というもの。いってしまえば、アニメ化によって付け加えられたものはなかった、ということなのかな。

それと、僕はアニメの世界観が何だかすごく前のものに思えた。何となく「オウム事件以前」の世界というか、オウム以後には描けない世界観のような気がした。今、調べたら原作の「あとがき」は94年4月付。阪神大震災と地下鉄サリン事件の前年だった。

アッコは「何となくインナーワールドの描き方が懐かしい感じがした」といっていたが、わかる気がする。ちょっと原作読み直してみようかな。ま、観て損はしないとは思うけど。

ところで、月曜はメンズデーだそうで、千円で観られた。そんなのあるんだ。

追記

さっき『鉄コン』読み返してみたら、スジ的にはホントに忠実。でも、絵の世界観はかなり変わってた。やっぱり、町のディテールとか、3D化するために緻密に設定されなおした町の構造とか、時代感覚のチューニングの緻密さとか、そのへんでかなり原作とは違っている。そして、原作はある意味オウム事件に対してはかなり「予言的」なところがあるという感じであった。
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