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夏目房之介の「で?」

山田えいじ『ペスよおをふれ』

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これ、57~60年「なかよし」に連載された少女マンガ(厳密にそういえるのかどうか、よくわからないけですが)なんだけど、おぼえている。非常に特異な肌触りのような、独特なテイストという印象で残っている。当時、ラジオ番組になったというから、かなりのヒット作だったのだろう。
小学館クリエイティブの復刊で久しぶりに読んで、なるほどと思うところがあった。線が色っぽいのだ。
山田えいじは、少年マンガも描いていた人気作家で、時代劇なんかをうっすら記憶している。描線の印象は僕の中で掘江卓とか『13号発進せよ』の高野よしてるなどと近いカテゴリーで記憶されている。特異ななめらかさというか、すべりのいい線で、うまいのだが、奇妙なサワリが僕にはあった。
『ペスよおをふれ』は、

多分家に本があったのかもしれない。何となく、何度も同じ絵をくりかえし読んだような感じがある。嫌い、好きというよりも、読まざるをえなくなるような、何というか、昼メロ的な、惰性で読んじゃうような力があった。
今回、読み返しても話はかなりご都合主義で、タイプは違うけど『13号』とか掘江卓とかの、ずるずる挿話が続くスタイルと似ている。ただ絵のせいか流れがなめらかで、ソフィスティケイトされたところがある。『マキの口笛』のほうが、はるかに構成とかもしっかりしているのは事実。でも、妙に残る何かがある。
111pにカラーの扉絵があり、主人公の少女が立っているのだが、その足に色っぽさがある。219pのやはり扉絵では、風でスカートがめくれ、下着がのぞいていて、案外意図的に色気を出しているのかな、とすら思うものがある。微妙だが、たしかに山田えいじの線には何かしら魅力があったんだろうと思う。
それにしても、この人の描くまつげつきの眼は、何で妙に怖いんだろう?

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