サンケイの知財取材
サンケイ新聞の知財特集の取材を受けました。取材にきたのは経済担当記者で、マンガのこと、漱石遺族として、などふだんしない取材をしているようです。記事はすでに掲載されてるようですが、サンケイWEBに特集取材の日記があり、そこにも書かれてます。
「夏目漱石の孫にお会いしました。」
「夏目房之介さんにお会いました」
とても好意的に書かれています。ただ、こういうコメント取材ではつねにあることですが、
本人からするとニュアンスの違いはある。死後70年延長問題には、たしかに僕は批判的です。そもそも「死後ン十年」の権利にまともな根拠がない、本人ではなく継承者が恩恵を受けることに論理的な正当性を見出せないんで。
しかし一方で、著作権を知財として考えたとき、国際的な競争の場面では日本だけ70年にしないことで生じる利益、不利益があり、著作権が国際的な関係の比重を高めている分だけ、大きな問題になる。もし、日本だけ延長に反対するのなら、きちんとそこに理論的思想的な根拠を主張できないといけない・・・・というような話をしました。早くいえば核と同じで、俺もやめるからお前もやめろ、という主張しかないだろってことですが。
それを「延長に反対」という言葉で書かれると、いや別に反対とはいってないんだけどな・・・・という気持ちになりますね。「反対」というレッテルでとらえられることになっちゃうので、それは違うわな、と思うわけです。
あと「漱石の著作権が今あっても僕には必要ない」という言葉は記憶がない。漱石はすでに国民的な共有財産なので、一遺族がどうのこうのいうべきものではない、ということをいったおぼえはあります。
僕のスタンスは基本的に「著作権は文化の創造性を保証するための、権利と社会的共有の利益のバランスの問題で、その調整をするのが法と運用である」というもので、一貫して主張したのは、そうした理解(大人の理解と対処)と思想が必要だってことだったはずなんですね。
でも、事前に記事をチェックさせてもらえない現状では、コメント取材を受けた時点で、こうした齟齬は必然的に生じます。オウム真理教が報道内容を事前にチェックしていたことが問題になって以来、新聞では原則事前に自分の発言でもチェックできないんですが、これもおかしな話です。
ともあれ、この特集そのものは意義のあるものだと思います。もちろん取材にも記者にも悪印象は全然もってないです。怒ってるわけじゃ全然ないってことは補足しとかないとね。現在では昔と違ってブログという自分自身のメディアで、こうしたことを書けるのでありがたい。
しかしね、新聞はもちろん、出版、広告など、著作権にかかわる企業は、新入生教育に著作権教育をとりいれるとか、もうそろそろちゃんと考えたほうがいい。僕みたいな半端な知識でも、この業界では通っちゃうんですから危ないですぜ(笑)。