オルタナティブ・ブログ > 夏目房之介の「で?」 >

夏目房之介の「で?」

手塚文化賞10周年

»

 9月10日(日)、手塚治虫文化賞10周年記念イベント「マンガ未来世紀」の第3部、『手塚治虫から続く道 21世紀のマンガ家たち』(萩尾望都×浦沢直樹×夏目房之介)に参加。浦沢さんから絵を描きながら話したいとのオファーがあったと担当者から連絡があり、簡単な流れとネタ、図版を用意して早めに着いて打ち合わせ。長時間ながら面白い試みだったんじゃないかと思う。

 当日も少し話したけど、

マンガ家は絵を描いたり、見たりしながら話すべきなんだよね。それが彼らの伝達手段であり思想なんだから。ただ、取材側に相応の力がないとダメだけど。作品を具体的に見ながら話し、それを紙面なり映像に反映しつつ伝達しないとね。そういう意味では、この企画の「面白さ」が、これから朝日新聞及び記念のムックに、どの程度反映されるか。朝日の見識が試されるってことですね(笑)。
 もちろん。じっさいにやるのは難しい。じっさい浦沢さんと萩尾さんでは相当温度差があるので、これを両方うまくかみ合わせるのは、ちょっと難しかったです。でも、今後もこうした試みはどんどんなされるべきだと思うな。あの日の観客だけで終わってしまうのはもったいない内容だったしね。
 僕の見た当日の観客の感想を書いたブログの中で、かなりまとまっているのが、これ↓

思い出し帖
http://blog.goo.ne.jp/elephant999/e/47f9fecf12c40c22c8644cca09954ae8
〈私が特に面白いなーと思ったのは、萩尾さんの妄想話。手塚治虫の「新選組」「火の鳥」で、なんでもないひとコマ、ひとセリフから妄想で話を膨らまして作り上げてしまうそうだ。それで、一晩中考えてしまうと。浦沢さんも、中学生の時、なかなか続編が出ない「火の鳥」を夢にまで見て、自分で創作していたと。本人は面白かったらしいが、今では何も覚えていないとのこと。〉
 このあたりの話、僕にはやおい的想像力について連想せざるをえない話題で興味深かったなぁ。

うっぴっぴっ
http://blog.goo.ne.jp/furafuwa/e/a6611aceeab0498c55a96432fe6f8962
〈しりあがり寿さんとばらっち[西原理恵子さんのことらしい]との即興での手塚キャラ描き較べ。参考資料なし。二人とも美大卒。アトム、ひょうたんつぎ、リボンの騎士、ブラックジャック、火の鳥。面白かったのだけれど、寒さ限界。ばらっちの火の鳥、かっこよかった。〉
 このブログも全体について感想を書いてます。

 あと、僕は遅れていったので聞いてませんが、祝辞が評判だった手塚眞氏のブログにも記事が↓

10th」  (手塚真氏
http://tzk.cocolog-nifty.com/blog/
〈5時間もの長丁場を少しも飽きさせなかったのは、プロフェッショナルなみなさんのサービス精神。[略]かつてのマンガ家は、もちろんウチの父も含めて、大衆の面前で平気でマンガを描く芸が披露できた。/そうやって、お客を楽しませた。/存在自体が「マンガ」だったから。[略]そして何より気持ちよかったのは、出席者全員の「マンガ」に対する深い愛情。/話を聞いていて、ああ、このヒトたちは本当にマンガがスキなんだ… という気持ちがダイレクトに伝わってきて、ウレシクなる。〉
 マンガへの愛情については、ホントに僕もそう思うな。

その他、目についたものを↓

勢川びきのX記
http://d.hatena.ne.jp/segawabiki/20060910
〈しりあがりさん、西原さんの能天気なお絵かき競争もむちゃ楽しい。/浦沢さんの細部にこだわる天才的視点がうれしい。/萩尾さんの天然にはやっぱり勝てない。/元気をいっぱいもらってしまった。〉

Hello,it's me
http://hello-people.way-nifty.com/hello_girl/2006/09/post_e793.html
〈祝辞は手塚眞さん。せみのお話はとってもおもしろかったです。〉
 手塚さんの祝辞の内容を紹介してあります。

珍スポ大百科ブログ
http://ameblo.jp/daibutu2005/entry-10016881178.html
〈・・・4時間超えました。予定時間オーバー。/なんとなーく頭の中で、リモコン持って早送りをしている自分の姿を想像してました。[略]時間長かった割には、あまり突っ込んだ話が聞けなかったのがとても残念。[略]それにしても、4時間はさすがに疲れました・・・。〉
 こういう感想もあります。第一部に出て以後客席にいたいしかわじゅんの話では、客席は相当寒かったみたいです。僕は第二部からで、途中で打ち合わせなどで出たり入ったりなので、感じませんでしたが。まぁ興味の深度によって、あの長時間はつらいでしょうなぁ。しかも、あれだけの個性のある連中を複数ずつ合わせれば、よほど綿密な打ち合わせでもしないかぎり、まとまって深い話はちょっと無理でしょうねぇ。

夏至
http://blog.goo.ne.jp/geshi_june/e/3bff213c51f9cc39056770f74bae88fd
〈浦沢さんは、その偶然のびたような線の美しさまで、まず頭の中で想像できて、その想像を手をつかって紙面に再現できるように努力するんだって言っていた。[略]で、その感覚がすごいと思った。[略]漫画家だしね。頭にある世界を、表現して作品をつくる人なんだ。/なんか、脳の構造が違う感じ?がした。
萩尾先生は手塚治虫の「新撰組」に影響されて、漫画家を目指したって。/コマに書いてないところまで妄想してしまうような感動を得たって。[略]
そんな感じで、他にもたくさんのお話を聞くことができて、とてもとても楽しかった。[略]漫画家がその場で描いた絵を見られるっていうのも良かった。/長時間だったし、かなり充実。/最高でした。〉
 もちろん、こういう感想もあったわけですが・・・・。

Comment(12)