Pinterestは爆発的でも特別でもない?その上でWEB担当者が押さえるべきポイントとは
作成者:中山陽平
昨年末から、新しいサービスとして注目され始めた「pinterest」
Pinterestは、その「女性比率の高さ」「ユーザ数の恐るべき増加」「それによる様々なサイトへの集客効果」といった内容で注目されてきました。
そのため、pinterestを理解しマーケティング策に落とすかを、悩んでいる方も少なくなったのではないか、と思います。
しかし、改めてPinterestについて見なおしてみると、実際とは異なる姿が見えてきました。
本当にリソースを投入して、それで売上アップなどの効果につながるのか、少し「?」がつきはじめています。
そこで今回は、Pinterestに関する、海外の興味深い調査記事と、今までの私自身の調査結果などを合わせて、「今のpinterestの姿」をご紹介したいと思います。
WEB担当者の方が実際に戦略を立てる際の参考になれば幸いです。
#目次
- 1.はじめに
- 2.Pinterestの現在について 〜 「注目されている点」の検証
- 2.1.pinterestは爆発的にユーザ数を伸ばした?
- 2.2.Pinterestは女性が多いSNS、特別な存在?
- 2.3.トラフィックが一気にGoogle+を越えた?
- 2.4.ここまでのまとめ(pinterestを特別と考えるのは…疑問符)
- 3.では、ビジネスに繋がるものなのか?
- 3.1.実際に参照トラフィックが増えているサイトがあるのは事実、だがその価値は?
- 3.2.データからPinterestを再度評価する
- 3.3.トラフィックについて
- 3.4.訪問者の動きについて
- 3.5.ここまでのまとめ(pinterestからのアクセスをCVに結びつける流れがないと無意味)
- 4.つまりはどうすればいいか?
- 4.1.現実的な話が不足している
- 終わりに
1.はじめに
「今のpinterestの姿」とはどんなものでしょうか。それを考えるために、pinterestに対して良く言われる評価を検証していきたいと思いま す。
Pinterest は主に3つのポイントで、注目を浴びています。それは
- 爆発的にユーザ数を伸ばしたこと
- 女性が圧倒的に多い、はじめてのSNSだということ
- サイトによっては、Google+を越えて、FacebookとTwitterの次に多い、参照トラフィックを生み出していること
です。
まずはこの、3つのポイントについての検証を行なっていきます。
そしてその上で、
「pinterestはビジ ネスに繋げられる可能性があるのか、あるならどういうことをしなければいけないのか」
について書いていこうと思います。
2.Pinterestの現在について 〜 「注目されている点」の検証
では早速3つのポイントを検証していきます。
しかし先に言ってしまうと、少なくともそのうち2つは、必ずともそうは言えないかもしれません。
2.1.pinterestは爆発的にユーザ数を伸ばした?
pinterestは爆発的にユーザ数を伸ばした、と言われます。
具体的には、例えば
「Pinterest の勢いが分かるグラフ! | Pinterestガイド」などでも引用されている、有名なインフォグラフィックには
「13 million users(according to some source ) in 10 short months」
(色々な情報を総合すると、1300万ユーザがなんと10ヶ月という短期間で増えている)
とあります。グラフはこちら。
数字だけ見ると、すさまじい勢いに感じます。
ただ、これを他のサービスと比較してみると、例えば
- Twitterの2009年度は、毎月平均600万人ほどが増え、1年で7,400万人、10ヶ月だと6,000万人のユーザが増えている(グ ラフ)
- GREEの会員数は、GREEが躍進してモバゲーを抜き去った時代である2009年度で、10ヶ月で約720万人のユーザが増えている(グ ラフ)
というように、まず、Twitterのスタートアップと比べると5分の1程度の伸び。
(出展:Number
of new registrations on Twitter down, number of tweets on the rise)
日本国内に限定したGREEと比較しても、2倍しか取れていません。
単純に比較はできませんが、米国は日本の3倍くらいの人口、また、米国で流行れば通常そのまま英語圏に広がっていきますので、対人口比率は5倍位が妥当で しょうか。
そうすると、GREEの0.4倍くらいの伸び、となります。
もちろん単純計算なのでデモグラですとかターゲットなど全て無視しています。
しかし、それを差し置いても、これを「爆発的」と呼ぶかどうかは非常に微妙なところ ではないでしょうか。
pinterestは「それなりにユーザを伸ばしてきている」くらいが丁度いいのかもしれませんね。
もちろん、そういったサービスがこれまで無かった中で伸びてきていたので、注目すべき存在であることに変わりはありませんが、過剰評価もすべきではないとい
う意図です。
2.2.Pinterestは女性が多いSNS、特別な存在?
こ れは、以前にITmediaで分析記事を書いたので、そちらをごらん頂ければと思います。
→ Pinterestに関るたった1枚のインフォグラフィックが教えてくれた事(1/2)
結論から言えば、米国のインターネットユーザは全般的に女性ユーザが多い傾向にある、ようでした。
私が調べた範囲では、Pinterestに限らず他のサービスでも同じでした。
該当記事から一部引用します。
ここまででインフォグラフィックの内容を検証しながら、USとUKそれぞれのユーザ層の違いを調べていきました。
こうしてみると「お国柄」といったマクロ要因のせいだと言えそうで、ちょっとミスリードしかねないインフォグラフィックなのかな、という感想です。
とは言え、実際このインフォグラフィックを引用して「pinterestって他と違うんだ、興味深い」という感想も少なからず見ます。
pinterestのユーザについてのみ、このような違いがある、と誤解されかねない見せ方になってしまっているのは、どうなのかなと思いました。
Pinterest に関るたった1枚のインフォグラフィックが教えてくれた事(1/2)
その中でも女性比率が高めなのは事実ですが、
それはシンプルに、
サービスが女性を引き付けやすいことと、女性を中心にはじまったこと、そしてやアメリカという国全 体の特徴の結果
ではないかなと思います。
従いまして、Pinterestは特別な存在ではなく、良くも悪くも一般的なサービスであるというべきではないかと思い ます。
2.3.トラフィックが一気にGoogle+を越えた
pinterestが始まってから、色々なサイトで「リファラーがPinterestのアクセスが爆発した!Pinterestは効果がある!」というレポートが 上がりました。
これ自体は紛れも無い事実です。
しかし、それが「意味のあるトラフィックなのか?」については次章で書いていきたいと思います。
2.4.ここまでのまとめ(pinterestを特別と考えるのは…疑問符)
- pinterestは決して「爆発的に」「恐るべき勢いで」ユーザ数を伸ばしたわけではない
- Pinterestの女性比率が多いのは、もともと米国のネットユーザの女性比率が多いからと、性別的な好みによるところが恐らく大きい。
- トラフィックはたしかに増えたサイトがたくさんある
結論としては、pinterestは、「そこそこ伸びている、米国女性の中で大きく流行っている画像中心のオンラインピンボード」 と定義するのがいいかと思います。特別なものと考えるのは、いかがなものでしょうか。
3.では、ビジネスに繋がるものなのか?
pinterest
はビジネスにも十分活用できるというイメージが広まり、なかなか招待状が来ない日
本でもビジネス活用のセミナーなども行われています。
#招待状はなかなか来ないらしいので、始めたい方はコメント欄でご一報下さい(^_^)
では、それは本当なのでしょうか?
本当に結果に繋がるトラフィックなのでしょうか。
ここで、そこを詳細に調査したcopybloggerの記事をご紹介したいと思います。豊富なデータによる調査記事です。▼Is Pinterest Traffic Worthless? | Copyblogger
そのままタイトルを和訳すると「Pinterestのトラフィックは価値がないのか?」
です。
内容を紹介していきたいと思いますが、結論から言えば
「ちゃんとコンバージョンに繋がるように手を入れないとと、無駄になってしまう」
です。
3.1.実際に参照トラフィックが増えているサイトがあるのは事実、だがその価値は?
ま ずは参照記事を引用します。
ここのくだり、ものすごく大切なことです。
The problem with most of what’s being written about Pinterest traffic is that it’s pointing out the wrong things. What passes for “reporting” is someone opening Google Analytics, seeing a spike in referrals from Pinterest, and writing an “OMG! Lots of Traffic” post.
(問題は、Pinterestのトラフィックについて書かれた多くの記事が、誤ったことに着目していることだ。「レポート」として通っているものは、 誰かがGoogleAnalyticsを開いて、Pinterestからの参照トラフィックが一気に増えたことを目にして、「凄いトラフィックが来てる!」と いったような単純なものだ)
Very few are taking the time to do any due diligence on the larger picture.
(もっと大きな視点からのデュー・デリジェンス[正当な評価]をしているものはほとんどない)
Are people clicking through, or is the “traffic” just a remote call to the pinned image? Where are your visitors going? What are they doing? Does the traffic convert?
(ユーザがpinterestから画像をクリックしてサイトに来てくれたとして、それは例えば、ただの拡大画像だけを見ただけでも「トラフィック」と呼ん でいいのか?来てくれた人はどこに行こう、何をしようとしているんだ?そのトラフィックはコンバージョンに繋がるのか…?)
このような問いかけから始まっています。
こ の観点は非常に重要です。アクセスが集まる=売り上げにつながる、と言うためには、
- 求めているユーザが来てくれていて
- その人を自社のビジネスなりに繋げる流れがあって
- その結果、期間の長い短いはあれ、コンバージョン(売上など)に繋がる
という実体がなくてはいけないからです。
ただアクセスを集めればいいのなら、いくらでも方法はあるんです。
3.2.データからPinterestを再度評価する
CopyBloggerの内容を抜き出します。
At Copyblogger Media, much of what we do is guided by data — traffic patterns, market analysis, feedback, customer input, and conversion scenarios.
(CopyBloggerでは、データをもとに様々なことを行なっている。アクセス者の動きや、マーケットの調査、フィードバック、カスタマーインプット、そ してコンバージョンに至るシナリオを)
And the increased Pinterest traffic we receive is treated no differently.
(そして、Pinterestからのトラフィックも、特別扱いせず扱っている)
その上で、以下のような結果が出たそうです。
これは”単純にpinterestのユーザの動きや特性としても興味深い”です。
3.3.トラフィックについて
- 1/1〜3/28の期間において、Pinterestは私達が管理しているサイトのトラフィックを増やしてくれた、Pinterestからのアクセス が増えた
- CopyBloggerにおいては、参照ドメインとしてFacebook、Twitterについで3番目がPinterestに なった
- 15 Grammar Goofs That Make You Look Sillyというインフォグラフィックが、15,000Visit を集めた。PINされた数を考えると、"pinした人の半分が、実際にサイトにやってきた"と 思われる。逆に言えばpinした人の半分は、サイトには来てくれない。
- そのインフォグラフィックのおかげで、pinterestからのトラフィックは3ヶ月前の2.7倍になった
- 一旦Pinterestで人気になった画像は、生存期間が長い。これはTwitterと対照的。Twitterは 瞬間風速。
続いて、同じく運営しているStuidoPressと
の比較です。これも興味深いです。
- もう一つ運営している「StudioPress」は、Copybloggerが参照ドメインの3位がpinterestだったのに対し、 pinterestは29位だった(あまりトラフィックは来なかった)
- しかし、アクセスが少ないにもかかわらず、pinterestから「StudioPress」に来たユーザは、長い時間滞在し、沢山のページを見てく れていた。
- 具体的には、平均滞在時間で見ると、Copybloggerが"32秒"だったのに対し「StudioPress」は"5分28秒"だった。平均ペー ジビューは、Copybloggerが"1.16"なのに対し、StudioPressは"6.34"だった。
- 直帰率は、Copybloggerが"91.7%"、StudioPressが "49.9%"だった。
こんなに違うとは驚きです。
3.4.訪問者の動きについて
- インフォグラフィックをめがけてきたアクセス者が、平均滞在時間などの数字が異様に悪かった。Copybloggerでも、他の記事に来たアクセス者 はそれほど、悪くなかった。
- 例えば「56 Ways to Market Your Business on Pinterest 」という記事は、結構数字が良かった。この記事を 見た後、大半がトップページに行ってくれていた。
- Pinterestから来たアクセス者のうち89.6%は、新規訪問者だった。対してStudioPressは44.4%だった。
- StudioPressで最も人気があったのは「How Developers are Driving the Business Adoption of WordPress.」
- StuidoPressで他にPinされていたのは、WEBサイトのショーケースのページ。どれも、直帰率などは低く、良い結果だっった。
3.5.ここまでのまとめ(pinterestからのアクセスをCVに結びつける流れが ないと無意味)
ここまでで分かるのは、きちんとpinterestから来たユーザをコンバージョンに繋げる策を打っておかないと、ただの無駄なアクセスになってしまうとい うことです。
pinterestからのアクセスがビジネスに役立つかどうかは、そこにかかっています。
4.つまりはどうすればいいか?
Copybloggerから引用します。
In short, it means:
1.You need to have specific goals for using the traffic from Pinterest.
2.Work with the traffic as you would from any source — driving it to landing pages and through a conversion path.
(端的に言うと、これは「Pinterestから来たユーザに対するゴールを決める必要がある」ことと「様々なソースから書くページが直接ランディングしてく ると考えて、ページからコンバージョンに至るまでの道筋を、ページごとにちゃんと作らなければいけない」ということだ)」
pinterest からのアクセス者も、そのアクセス者が興味を持ってもらえる形で、コンバージョンに繋がるような道筋 を作ることが出来れば、それは価値のあるアクセスになります。
そしてそのためには、まずは、
現状pinterestからアクセスが激増!している人は、そのpinterestから来たユーザ
がきちんとサイト内を回遊したり、コンバージョンしたりしているかを確認する。
かなり普通の人とは異なる嗜好で来ているはずの、pinterestから来た人に対しての適切なゴー
ルを決める
ことが大事です。
そして、現状を把握した上で、ゴールへの道筋を作っていくことが必要です。
ただインフォグラフィックを見たいだけ、で終わらせない様に、関連トピックスや興味の有りそうなコンテンツへの誘導を入れていくなどの策を、直接ランディン グする可能性があるページ全てに施します。
そういうことをしない限り、あるいはそういうことをできないようなビジネスの種類の場合は、pinterestからのアクセス者は、ただの 「にぎやかし」にしかならないと考えるべきです。
4.1.現実的な話が不足している
では、それに対してどういうことをやったらいいか、という話がまだまだ不足していると感じます。
たまに紹介される事例は、正直、現場から見れば浮き足立った、あるいは一部分を切り取ったものばかりと言わざるを得ませ ん。「pinterestとサイトを 連動させた!」と書いてあって、実際に見てみると、ただPinボタンを各所につけるようにしただけ…という例まであります。連動というよりただの設置です。
また、よく「コンテストをやろう」ということで、特定の写真の内どれがたくさんpinされたかのコンテストをやり…というものも見かけますが、そのpinを 「いいね!」にしたら、そのおかしさが分かっていただけるのではないかと思います。
こんなことがどんどん行われて行ったら「repin」「like」の信用性がガタ落ちです。
また、活用のコツとしも
- プロダクトを超えたブランドのコアバリューを見せる
- ボードを分けてマイクロターゲットとのコミュニケーション
など、取り留めのないもので、現実的な施策に落としきれていないものがほとんどです(私が見逃しているものも多々あると 思うので、そこはお許しください)
そうではなく、提案するならもっと、
- pinterestからのユーザをこういうふうに誘導して、このコンバージョンに結びつければいい。
- 画像の画面にはこういった誘導文言を入れて、こうしていくと、見込み度が上がっていく
といった内容が、必要であり、それこそが「ビジネス活用」ではないでしょうか。
終わりに
記事の最初のほうでも述べましたが、pinterestは特別なSNSでもなんでもありません。
ただの画像中心のオンラインピンボードです。基本的なアクセス者に対する考え方は何一つ変わりません。
実際のデータを見ていき、具体的な策に落とすことで、pinterestをどのように使えば、ビジネスのプラスになるかが見えてきます。
pinterestからくるユーザのことを考えて、それに対して提供できる価値を作っていき、自社のコンバージョンに繋げる道筋を作っていくこと、これが王 道かつ最も大切。
これから日本でもpinterestがはやっていくかどうかは、まだわかりませんが、その兆しが見えてきたら、ぜひ「ゴールを決めて」「そこに至る道筋を 作って」「ゴールに至らせる」ということを考えて、対策を打ってみてはいかがでしょうか。
…
pinterestというサービス自体は、素晴らしいものだと思います。
きっと、いろいろな可能性があるのではないでしょうか。
この記事が、何かの参考になれば幸いです。
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