プレゼンの困った質疑応答を助けてくれるマジック・フレーズ 『良い質問です』
講演やプレゼンを聞いていて、実力が分かるのは、冒頭と、質疑応答の部分です。
話し始める前、歩いてくる姿や表情だけでかなりのことが分かります。また、話し始めの第一声と、最初に何を話すか、といったところで、この日の出来が決まると言っても過言ではありません。
そして、もう一つは、一通り話しが終わったあとの質疑応答が重要な場面だと思います。
冒頭も大事ですが、今日は、この質疑応答についてのことを書いてみたいと思います。
一般的には、予想しなかった質問に対する「瞬発力」が問われる、とも言われますが、瞬発力に関しては、それほど難しい問題ではありません。瞬発力が足りなかったり、頭の回転が少しくらい遅くても、ちょっとしたテクニックでクリアすることができます。
瞬発力よりも、語り手がいかによく内容について分かっているか、また深い想いを持っているか、また、質問者との対話から感じられる人間力などのほうが問われます。
練習ができないし、準備をしても、どんな質問がくるのか分からない、というリスクがあるので、質疑応答をしない講演者もいます。
本来知りたい事とは別に、講演者の力を試すような質問をしてくる人もいます。また、公式の取材が入った会見では、トップが当然把握していないような細かい数字の質問をしたり、点数をつけさせたりするような、ちょっと意地悪な質問をしてくる人もいます。
どんな人が、どういう質問をしてくるか予測がつきにくい(もちろん、国会などは別ですが・・・)という難しい面もありますが、しかし、本当の満足度を考えると、やはり質疑応答はあったほうが良いと考えています。
◆質疑応答の心得 「どんなに難しい質問でも『表現』に出すな」
私は、時間が許す限り、質疑応答を受けるようにしています。
それは、「満足度」はもちろんのこと、予想しなかった良い質問を受けると、今後の参考になるからです。
「ああ、こういう質問があったのか!」と、私一人の頭で考えているのではカバーできないところを、鋭くついてくる質問は、本当に良い質問です。
会場には、毎回、深い考えを持っていらしている素晴らしい方が必ずいらっしゃるものです。
ただ、こういう質問は簡単に答えられるものではありません。
大抵は「答えるのに難しい質問」です。
しかし、難しくても、深い質問に答えると、自分の中に新しいものが生まれます。
以前、答えることで、瞬間的に、新しいメソッドを考えついたこともあるほどです。
人によっては「こんな質問をして!嫌がらせか!」と怒っていらっしゃる方もいますが、こういう質問にこそ、自分に課された一番の問題が隠されています。
さあ、そういうとき、どのように答えたら良いでしょうか?
人の講演を聞いていると、難しい質問をいただいたときというのは、よほどのトップでも「動揺した表情」を隠せません。
目が落ち着き無く動き、表情がこわばります。
これでは、その時点で、質問者とのせっかくのやりとりは深まりません。
もしすぐ答えられなかったら黙っても良いのです。
間違っても「あ〜」とか「え〜」とか言って、沈黙を自ら打ち破ってはいけません。「それで、え〜、だから、あ〜」などと言っていては、「困っているな」とすぐに分かってしまいます。
沈黙の共有こそ素晴らしい時間です。
ただ無表情で黙っていては、不安にさせてしまうので、少し演じてみましょう。
こういうときの「マジック・フレーズ」があります。
「良い質問です・・・・」
「良い質問をいただきました・・・」
と言って、斜め上を見上げ、言葉が降りてくるのを待つポーズをとります。
すると、質問者や会場の方々も「真摯に答えようとしているな」と安心します。
まず落ち着いて、言葉が浮かんでくるまで時間をとりましょう。「瞬発力」などと考えてあわてて答えるとろくな答えをしません。
内容については講演者が一番分かっているはずです。時間がとれれば、落ち着いて良い答えをすることができるでしょう。
本日のマジック・フレーズはこちらでした。
「良い質問をいただきました・・・」
覚えておいてお役立てください。
質疑応答では、私は今まで一度も自分で答えられなかったことがありません。
それは、質問くださる方々が、素晴らしかっただけで、私が出来ていたとは思いません。講演を共同作品としてとらえてくださり、両方が最良の時間とするようにとの想いを共有できていたからだと思います。
今まで、本当に良いご縁をいただいて参りました。そのことについては、これまでご一緒させていただいた方々に深い感謝しかありません。