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国際化のコミュニケーション 指揮者はどうしているのか

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一般的にみたら、音を出していない指揮者とはどんな仕事なんでしょう、とよく質問を受けます。
 
指揮者の大野和士さんは、国際的に活躍する指揮者です。
 
音楽ジャーナリストの渡辺謙太郎さんによる大野さんへのインタビュー「指揮者のしごと」が「ekpress」に掲載されていましたので、引用いたします。
 
「指揮者は常に楽団の一歩先を行って何かを発信していないと、音楽は生まれてきません。練習では音のイメージをリズムで刻みつつ、そこから少し遅れて出てくる音の良し悪しを即座に判断する。そして、修正の必要はあれば、簡潔な指示で的確に行う。こうした基礎を、地道に少しずつ学んでいく必要があります。」
 
と指揮をすることとは、についておっしゃいます。
 
コンサートで聴いているとあまりよくわからないのですが、じつはオーケストラの音は少し遅れて出てくるのです。私が、以前お仕事を一緒させただいたY先生は、初めてプロのオーケストラを振ったとき、自分の棒より、音が遅れて出てくることに驚いたそうです。
 
指揮者というのは、いつもオーケストラの伴奏でレッスンをするわけではありません。
たいていは、2台か1台のピアノを相手に指揮棒を振ってトレーニングする。
 
ピアノという楽器は打楽器に近いものがありますので、棒をふれば即座に音が反応する。
しかし、オーケストラは弦楽器や管楽器など、音の立ち上がりが打楽器のように反応しない楽器の集団なのです。
 
だから、棒より遅れて出ているのは、指揮者の指示の後に出ているのと、楽器の特性もあります。
初めてのときは、その反応にあわせようとしていると、どんどんオーケストラも遅くなる。
見かねたコンサートマスターが、小声で「先に振ってください」と言われて学んだ、と言っていたのが記憶に残っています。
 
オーケストラは、一見自由に演奏しているようでいて、実はきちんと指示を見ているのです。
 
「即座の指示が簡潔かどうか。」
これは大変重要なことです。
 
その一言を何を言うか。
 
それで、その指揮者の力を判断できます。
 
棒の技術は二の次ともいえます。
 
それでは、大野さんのような外国人との仕事が多い指揮者は楽団員とどうコミュニケーションするのか?日本の欧米では違いがあるのでしょうか?
 
「コンサートマスター(楽団員のまとめ役)は指揮者と楽団員の橋渡しをするキーマンなので、お互いの音楽性や性格を深く知ることが重要。日本と欧米の違いですが、我々の仕事は音がメインなので、楽団の国際化が進んだ現在は、それほど差を感じませんね。」

ウィーン・フィルのように意識して独自の文化を守り続けようとしているオーケストラ以外は、音を聴いていても、昔の録音に比べるとかなり国際化は進んでいるように感じます。大野さんがおっしゃるとおり、外国人とのコミュニケーションをとるためのハウツーを学ぶというよりは、やはり音楽性や人間性を知ることのほうが大事なのかもしれませんね。

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