自分の変声を一番わかっていないのは自分 それは「理想フィルター」がかかっているから
なぜボイストレーニングをしようと思ったのか?
大抵の方は「ある日、録音で自分の声を聴いて驚いた」とおっしゃいます。
「これって自分の声?しかも、ちゃんとしゃべれてないじゃないか。これじゃあ説得力あるわけない・・・」
私自身も、録音の声が想像していたのと違うことにショックを受けて、やはりきちんとトレーニングをしなければならないと思ったのがきっかけです。
実は、自分の声を一番分かってないのは自分なのです。
人は、骨伝導と空気中に響いている音をミックスで聴いています。自分以外の他人は、空気中に伝わる音のみで聴いていますから、当然聴こえ方は違うわけです。
そして、たちの悪いことに、骨伝導で響く音というのは、実際より良く聴こえてしまいます。
そして、聞こえ方が違うだけではなく、長年聴き続けている骨伝導の声は、自分が勝手に美化して聴くようになります。
私はそれを「理想フィルター」と呼んでいます。
その理想フィルターをいったん外していただくためにも、ビジネス・ボイストレーニングのレッスンでは、必ず録音を行い聴いてもらいます。
先日、受講生のMさんのレッスンで録音を行ったのですが、音源に間違って私の声が入ってしまったことがありました。
Mさんはレッスン二回目で、最初よりずいぶん声がしっかりしてきていたのですが、録音を聴いて「先生の声、私と全然違う!」と、改めて驚いていたのが印象的でした。
もちろん、私の場合は、少しはトレーニングをしていますから違うのは仕方ないことです。
でも、実際、一緒に話していても、自分の声というのは、良く聴こえてしまっているのですね。
「理想フィルター」がかかってしまっているのです。
録音をすると、そのフィルターがはずれますから、初めてその差に気がつくのですね。
いつか、声楽のレッスンに行ったとき、先生が「皆、自分がマリア・カラスくらいと思っているから困るのよね」とおっしゃっていたことがありました。
歌も、自分で歌っているとそこそこイケているように聴こえますが、録音をしてみると名歌手との差に愕然とします。
それほど、骨伝導というのはやっかいなもので、知らなければずっと「理想フィルター」がはずれずに終わってしまいます。
ボイストレーニングをなさっていない方も、ぜひ、一度録音や録画をされることをお勧めします。
スマートフォンを持っている方は、気軽にスピーチやプレゼンを撮ってみると良いですね。
上達の1歩は、まず自分の理想フィルターをはずすことから始まりますから。