重松清さんの「ファミレス」 だれかと食べるごはんの美味しさ
日本経済新聞の夕刊の連載小説、重松清さんの「ファミレス」が終わってしまいました。
「ファミレス」は、仲良し「オヤジ三人組」の人生や生活を描いた小説です。
味のあるイラストと共に、味のある人生を描いていて、共感する部分も多く毎日楽しみに読んでいました。
私がこの小説で一番気に入っていたのは、食べ物のシーンです。
重松さんは、グルメなのでしょうか?
料理に関するウンチクが深くて、毎回ワクワクしていました。
ステキな料理研究家エリカ先生の作る、マヨネーズを入れる冷めてもおいしい卵焼きの焼き方など、今はそのまま使わせてもらっています。
「オヤジ3人」は、それぞれ料理にこだわりを持っている、お惣菜の移動販売もやっている康文(オガちゃん)、学校の先生の陽平(ミヤちゃん)、そしておしゃれな雑誌の編集長、一博(タケ)。
それぞれが、「料理はこうでなくては」「旨いメシとは」と、料理観や哲学を持っている。
でも、家族や奥さんとの関係を見直す年齢になり、料理に対する考え方も同時に変化してくるところが面白い。
おいしいごはんを食べて、皆がおいしい顔になる。
やっぱり、料理は一人で食べるより、みんなが美味しい顔になって食べるのがいい。
それは「ファミレス」で食事をしている人たちを見ると分かる。
「ファミレス」を敬遠していたミヤちゃんも、最後はファミレスもいいもんだな、と感じ始める。
重松さんは、この連載の話しを受けた直後、東日本大震災があったのだそうです。
「『おはよう』と『おやすみ』を繰り返す毎日、『行ってきます』と『行ってらっしゃい』を繰り返す毎日、そして『いただきます』と『ごちそうさま』を繰り返す毎日・・・。それがあまりにもあっけなくそして残酷にに断ち切られることの悲しさと悔しさを、僕たちは誰もが知ってしまった。だからこそその思いをコメディーに裏返すことで、一年間以上に渡ってお付き合いいただく物語に仕上げてみたかったのだ」
連載を終えて2013年4月3日日経新聞に重松さんが書かれた記事の引用です。
私は、一人で食べるのも好きですが、やはり好きな人たちと食べるごはんはもっと楽しい。
おいしいものは、誰かと食べると何倍にも美味しく感じます。
ごく普通に味わっている一回一回のごはん、これは、いつ「最後の晩餐」になるのかもしれない。日々の料理を有り難く、いつくしみながら味わっていきたい、そう思いました。
重松さんは、峰岸達さんの挿絵に「励まされ、ハッパをかけられ、手を引かれて書き進めた」とおっしゃっています。
私も、毎回の峰岸さんも絵、楽しみにしていました。
こちらに絵のリンクがありますのでどうぞご覧下さい。→リンク
重松さん、素晴らしい連載を有り難うございました。