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「リンカーン」 ダニエル・デイ=ルイスの狂気

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第85回アカデミー賞で、ダニエル・デイ=ルイスさんが「リンカーン」で主演男優賞を獲得しました。
 
ダニエル・デイ=ルイスさんの役作りは、徹底していていることでも有名です。
 
例えば、「マイレフトット」では、先天性の脳性小児麻痺による重度障害で左足しか使えなくなった画家であり作家の、クリスティ・ブラウン役を素晴らしく演じたのですが、撮影期間中は左足で生活していたのだそうです。
 
今回のリンカーン役も、撮影に入る前からすでに役になりきって生活し、アメリカ南部訛りの英語を話し、初日に現場にはいってきたルイスさんは、もう誰が見てもリンカーンそのものでした。
 
ルイスさんは「演じる時、役と自分とが秘密を分かちあえるところまでなりたいと思う。」と語っています。
 
一時期、役者をやめて、フィレンツェにて有名な靴工房に弟子入りしていたルイスさんですが、師匠を驚かせるほどの見事な職人になったそうです。
徹底してその役を演じきる、という意味では、靴屋であろうと、リンカーンであろうと、クリスティ・ブラウンであろうと、ルイスさんにとっては同じことだったのかもしれませんね。
 
これほどの役作りをする役者といえば、「ダークナイト」にてジョーカーを演じたヒース・レジャーさんでしょう。
 
大変素晴らしい役者ともいえますが、危険な役作りでもあります。
 
ヒース・レジャーさんは、「ダークナイト」撮影後、自らの命を絶つほどに自分を追い詰めていました。きっと、どこからどこまでが自分なのか役なのか、その境界線を越えてしまったのだと思います。
 
羽生名人が「魔境」と言っている領域。
羽生さんは、そこに本当に行ってしまうと、二度と帰って来られなくなることをよくご存知だったのでしょう。
 
なりきっている中で、冷静さを保つことは大変なことです。
 
私は、ある指揮者から「どんなに自分が入り込んでいたとしても、10%の冷静さを忘れるな」と言われたことはいまだに忘れません。
 
狂気と正気の狭間で創造性を発揮できる者。それこそが真の天才なのかもしれないと思います。

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