いつの時代も才能がありすぎるとやっかみにあう
松本市のカフェ「プレイエル」は、ショパンの代名詞ともいえるフランスのピアノメーカー「プレイエル」と、フランツ・リストが愛用していた楽器、エラール社の「エラール」1909年製が置いてあります。
カフェ「プレイエル」さんからいただいた資料に面白いことが書いてありましたので、下記にご紹介します。
「第二次世界大戦中、米軍の爆撃により、プレイエル社でストックしていた40年分の木材が焼失は決定的となり、大音量のモダンピアノに席巻されました。
戦後、エラールはフランスのピアノメーカー、ガヴォーと合併、プレイエルも合併、倒産。そこで、本来のプレイエルとエラールの音はなくなってしまいました。
1990年に政府援助のもと復活。
1996年、シンメル社から商標を買い戻し、新生プレイエル社が発足しましたが、エラールは消えてしまいました。(以上引用)」
その貴重なエラールが、カフェ「プレイエル」には存在しているのです。
エラールはベートーヴェンも好んで使っていたそうです。ベートーヴェンのピアノ・ソナタの中に、どうみても軽い鍵盤で高速連打しなければ表現できないようなものがあり、やはりエラールの影響があったのだなあ、と、楽器と作曲家の関係性の深さに納得しています。
そのエラールですが、1752年生まれの創始者のセバスチャン・エラールは、優れた職人であり、鋭い感性の持ち主だったようです。
最初、パリのチェンバロメーカーにお勤めしたのですが、類稀な技術力で師匠を超えてしまいクビになります。
次の職場では、モラルに反して、師匠の代わりにピアノを作り、ばれてしまいますが、エラールの技術が広まることになります。
自分の工房を開きましたが、周囲のやっかみにあい、ギルドという同業組合から外されてしまうのです。
その後、フランス王朝のマリー・アントワネットにとりいってピアノをたくさん贈っています。
そしてまたしても、フランス革命により、処刑されるところをイギリスに逃れて、イギリスにて確固たる地位を築き、その後パリに戻ってエラールをヨーロッパ最高のメーカーに育てたのです。
どんな時代でも、才能がありすぎて人と違うことをしたり、優秀な人はやっかみにあってしまうのですね。
ピアノ職人の世界にも、面白い人がいたことを知りました。
作曲家の生の声が聞こえてきそうな、アンティークの貴重なピアノが、今後も長い年月残り続けてくれるといいですね。
「プレイエル」さん、有り難うございました。これからも、良い音を残していってください。