「ねえ、ねえ、聞いてよ!」と言っていた自分は今でも同じ 人は伝えるべきものを持っている
Apple TVにて、映画「英国王もスピーチ」を観ました。
コリン・ファース演じる、イギリス王ジョージ6世、アルバートは、吃音に悩まされていました。
アルバートは、特に大衆の前で話すと極度に話せなくなってしまいます。
国民の期待に応えるために、オーストラリア植民地出身の平民である言語療法士、ライオネル・ローグのもとに治療に通います。
当然プライドが高く、また癇癪持ちのアルバートに、ローグは「私のやり方に従っていただく」と言い、王室の礼儀作法に反してアルバートを愛称の「バーティ」と呼びつけ、自分のことは「ライオネル」と呼ばせ、平等な立場を要求します。
それは、アルバートが先天的な吃音ではなく、王室特有の心の問題を抱えていたことを見抜き、対症療法で吃音は治らないと考えたのです。
映画の中で、ローグはアルバートに「私はあなたの友人ですよ」と訴え続けます。
アルバートは王室の守られた世界にいながらも、常に孤独でした。本当の気持ちを話せる友人もいない。
まずは心を開くことが、吃音を治すことにつながるのだということなのです。
望んでいないにも関わらず、ついに王の座についてしまったアルバートは、ジョージ6世となります、そしてちょうど同じ時期に、イギリスはドイツのポーランド侵攻を受けてドイツに宣戦布告、第二次世界大戦が始まるのです。同日、ジョージ6世は大英帝国全土に向けて国民を鼓舞する演説を、緊急ラジオ放送することになりました。
ローグの治療と本人の努力により吃音を克服し、ジョージ6世は完璧な演説をこなすこととなります。
演説の前「みんな、どうぜ失望するにきまってる」と不安になって捨て鉢になってしまうアルバートに、ローグは国王の椅子に座りながら挑発します。心の底から感情をぶちまけ「私は伝えるべきことがある!」と叫ぶアルバートに対して、ローグは深く頷きます。そして、アルバートは、「心から出たことば」と自分の饒舌さに驚くのです。
映画の中で、ヒトラー演説のニュースを見たアルバートが「何を言っているのか分からないが上手だ」と言っているのが印象的でした。
ヒトラーは、間違っている、いない、は全く別問題として、自分が一番信じている、一番感動している。そして心から伝えたくて言葉を語っています。
それは、ドイツ語が分からなくても、言葉が分からなくても、良い演説とは素晴らしいスピーチとは、「言葉の響きから伝わるもの」なのです。
スピーチとは、伝えたい心なのだ。
そして、国王でなくても、総理大臣でなくても、どんな人も伝えたいものを持っている。子供の頃「ねえ、ねえ、聞いてよ!」と言っていた自分は今でも同じなのです。
ぜひ伝えていただきたい。
私もできたらそのお手伝いをさせていただきたい。
そう思えた映画でした。
素晴らしい映画を有り難うございました。