強くする前の急な弱音は「かめはめ波」である
2013年1月5日、私が代表と指導を務める合唱団「コール・リバティスト」の2013年の初練習がありました。
この日はの二部の練習に「東混」(とうこん、東京混声合唱団)のテノール志村先生にいらしていただきました。
佐藤眞作曲の混声合唱のための組曲「蔵王」より、「吹雪」「樹氷林」、松下耕作曲の「三つの詩篇」より「谷川の水を求める鹿のように」、山田耕筰作曲・増田順平編曲の「からたちの花」を歌いました。
「蔵王」の「吹雪」は、蔵王の激しく厳しい荒れ狂う吹雪の様子を描いています。
激しい曲は、演奏するほうが興奮しすぎてしまうと、テンポが走ってしまったり、転んでしまったりします。そうなると
曲のエネルギーが半減してしまいます。
音符が坂を転げるように速くなってしまうと曲本来持っている迫力が出ないのです。速くて激しい曲ほど
大きなエネルギーを秘めながら転ばずに突き進むことが必要です。
この曲で、強く歌っている途中で、急に弱くするところが何カ所かあります。
弱いと気持ちも弱くなりがちですが、とんでもない。こいう弱音は大変なエネルギーを持つ弱音です。
「ドラゴンボール」に「かめはめ波(かめはめは)」という技があります。
これは、グーッとありったけの巨大なエネルギーをためて放出する技。
ものすごい破壊力を持つ技なのです。
強いところを急に弱くしてだんだん強くする指示が出てきたら、その「かめはめ波」を出す準備をするためのものだと思ってください。絶対気を抜いてはだめです。
頂点を目指すための弱音ですので、いったん弱くしたら、エネルギーをためて迷いなくクレッシェンド(だんだん強く)してください。
強いところで急に弱くするのことほど難しいことはありません。だからこそそこでエネルギーが発生するのだということを作曲家はよく分かって曲を作っているのですね。
「大変なところで弱い音がきたから一息つける」ではないのですね。
この日はほかに、松下耕の「谷川の水を求めるしかのように」の中で、強く激しい箇所、Appassionata(アパッショナータ:熱情)を志村先生は「絶対に転ばない。急がないように」とおっしゃいました。
急いだ演奏は、あせっているように聞こえてしまい。真の迫力がでにくいのですね。
こういう場所というのは、テンションが上がっているので本当は、急ぎたくなるのですが、必死に踏みとどまります。
強い意志が必要なのです。
すごく重い作品なので、先生も珍しく真剣モード。気迫でご指導くださいましたね。
レッスンは、指導者と受け手との共同作品だということを感じました。
志村先生、有り難うございました。
1月20日もよい演奏ができるといいですね。