「笑顔はすべてを癒す」 知的で説得力のある響きを手に入れるビジネスボイストレーニング『わりばしボイストレーニング編その2』
私が初めてリサイタルをしたときいただいた一番良いアドバイスは、「笑顔で出てきなさい」でした。
その先輩ピアニストは10年以上ヨーロッパで活躍し、日本に帰国したばかりの新進気鋭の方でしたが、向こうではステージマナーとして笑顔で出てくるように教えられたのだそうです。
私は、「深刻な作品を演奏する場合に笑顔はおかしいのではないか?」と思ったのですが、その先輩は「そうではない。出てくるところからお客さんはあなたを見ています。弾けているのだから、笑顔でないのはもったいない。演奏者があまり硬い表情だと、『あら、大丈夫かしら』と不安になってしまいます。笑顔で余裕があるように見えると、安心していられます。」と言います。
そして、もし緊張していたとしても、「いらしてくださり有り難うございます」という気持ちを笑顔で表現しするほうが、お客さんが心を開いてくださり聴く姿勢になってくださるのですね。
笑顔は好印象と信頼感を与えるのです。
笑顔と言ってもやりすぎも不自然です。あくまでもエレガントに節度を持った笑顔は上級者レベルですね。ぜひそこを目指してみたいものです。
最近、ビジネスボイストレーニングの講師をさせていただくことがあるのですが、男性はあまり笑えない方が多いですね。
といいますか、どう見ても笑って見えないのですが、ご本人は「精一杯の笑顔」だとおっしゃいます。
そういう方は、大抵、普段あまり笑わないような厳しいお仕事をなさっています。
そうすると、表情を作る顔の筋肉が弱ってしまい、いざ笑おうと思っても、顔が笑顔を作れないのですね。
私は、そういう方には「わりばしボイストレーニング」をお勧めしています。
これは、いつも歯を食いしばってお仕事をしていらっしゃるため、口周りの筋肉が緊張していて、ボイストレーニングの基本のポジションをとり難い方用のトレーニングでもあるのですが、笑顔の練習にもぴったりです。
お箸を横にして軽くくわえながら、お茶碗でも洗ってみてください。
最初は、頬の筋肉がひきつったりしますが、だんだん筋力がついてきて、スムーズに笑えるようになります。
「笑顔は真剣味が足りない」と思われる心配はありません。
まず出てくるところだけは、笑顔でお客さんの心に安心感と信頼を与えたいですね。
そして、真剣な話しのときはもちろん真剣な表情ですが、このときは要注意。目は真剣でも、頬だけを上げているようにしてください。頬を下げるととたんに声の響きが落ちて、口の中が狭くなりますので滑舌も悪くなります。それに、真剣な場面でも頬が上がっている表情のほうが「強い意志」を感じさせてくれます。
「わりばしボイストレーニング」で常に頬をあげる意識を持つようにすると、「頬だけを上げている」という技も身につきます。
声も印象も変わってきますよ。
おまけですが、笑っていると副交感神経が刺激されて、リラックス効果があるのだそうです。
ものすごく緊張していても、とにかく無理にでも「笑う」。
そうすると少し緊張が解けてくるのを感じると思います。
ぜひ「笑い」を取り入れて、良い声で良いスピーチをなさってくださいね。