良い演奏はテンポの揺れがある
音楽を演奏する上で、テンポ(拍子)というのはとても大事です。
初心者のうちは、拍子をしっかり一定にとって演奏することを教えられます。
しかし、だんだんと人前で人に鑑賞していただくような演奏にしていくためには、「きちんとテンポで間違えずに演奏しました」というだけでは、良い演奏になりません。
2012年8月25日私が運営・指導を行う合唱団「コール・リバティスト」での練習がありました。この日は、夜の全体練習に東混の秋島先生にいらしていただきました。
山田耕筰作曲、増田順平編曲の「この道」を教えてくださいました。
この作品は、テンポ・ルバート、テンポの揺れが必要です。
(テンポ・ルバートとは、直訳すると盗まれた時間となります。)ルバートは、演奏者がテンポをある程度の自由を持って演奏することです。
これは初心者には難しく、下手にテンポを動かそうとすると、ダレてしまったり、間合いがとれなかったりして、心地よい演奏になりません。
しかし、心の動きを伴って上手にルバートすると、聴き手には自然に聴こえて、とても癒される音楽になるのです。
テンポを動かすときのお約束事があります。
それは、遅くしたらまたどこかで速めて戻す。速くしたらまたどこかで遅めて戻す。基本のテンポに戻すことです。厳密ではありませんが、テンポがプラスマイナスゼロになるようにすると良いと考えています。
『この道』は、クレッシェンド(だんだん強く)のとき、ちょっと速めになり、ディミヌエンド(だんだん弱く)のとき、ゆっくりめになります。
だから「こ~の~みち~」の「ち」に向かって速くなり、「ち」のあとゆるんで「・・は~いつかきたみ~ち~」のところで遅くなります。
「どこかで速くなったらどこかでゆっくりになる。どこかでゆっくりになったらどこかで速くなる。『つじつまが合う』というわけです。それによって、良いテンポのゆれが出てくるのです。逆に、どこかで速くなってそのままだと『速くなった』と言います。どこかで遅くなってそのままだと『遅くなった』と言います。」
と秋島先生はおっしゃいます。
それも、指揮者に「ここゆっくり~」「はい、ここ速く~」とひとつひとつ指示されるのではちょっと違ってしまいます。自分たちで感じあって揺れをつくっていくことが、良い演奏につながります。
ぜひ良いゆれのあるテンポ感で歌いたいですね。