ハモるとは何? 真珠の中の石ころにならないために
音を正確に、または自分の表現したい音を忠実に再現することは、演奏にとってとても大事なことです。その理想を実現するために演奏家は膨大な時間を費やすのだと思います。
2012年9月29日、私が運営・指導を行う合唱団コール・リバティストの練習がありました。この日はマエストロにご指導いただきました。(マエストロとは本番を指揮する人のことを言っています)
「音を正確にとる。」
音楽なのだから、もっと自由に考えたらいいのではないか、と思われるかもしれません。
しかし、このことは合唱にとっては何よりも気をつけなくてはならないことです。
ソリストのオペラ歌手が歌う場合、多少の音程の誤差はあっても、聴衆はその音楽性と全人格に感動するのであって、「正確だったかどうか」というのはあまり最終的には関係ありません。実際のところ、スター歌手でも「あれ?」と思うようなところは少なからず発見できます。
しかし同じ歌でも合唱の場合少し違うのは、「ハーモニー」で感動する、というところです。
一人のスーパーマンがいるわけではなく、複数の人たちが集まって、一人ではとうてい不可能なハーモニーの世界を作り上げる。そのためには、正確な音の「組み合わせ」がしっかりはまらなくてはハーモニーにならないのです。
そして、「正確さ」にはもう一つの種類もあります。
それは「音色」です。
音程は正確であっても「ハーモニーしない声」というのがあります。周囲と溶けない異質の声ということです。例えていうと、真珠のネックレスの中に加工されていない石が混じっているようなものです。
コール・リバティストでは、トレーニングがすすみ、合唱団員さんのご理解も深く、以前よりとても良くなってまいりました。しかし一般的には、すべての指導者にとって悩みの種でもあります。
これは様々な理由があるのですが、主にボイストレーニングが不十分で「地声」を使ってしまうと、綺麗にハモリません。
そして、そういう方は「自分が頑張らなくては」と声を張り上げておられて、周囲の声を聞いていないことが多いので、悪気もなくご自身で気がついていないことが多いのです。だから、あるとき気がつくと大変驚かれて落ち込んでしまわれます。
だから、私は「まずは周囲と自分の声を聞きましょう」(録音されるとをお勧めします)そして「ボイストレーニングをやりましょう」と全ての方に申し上げます。それは、いつ自分がそうなるともしれないという危機感を全員が持つべきだと思うからです。トレーニングを怠ればすぐにそれは声に表れます。「自分は大丈夫」そう思っているところから、心の緩みが始まり、知らないうちに自分の力を落とします。
全ての合唱に関わる方々が、ご自分の可能性を信じて成長を一番に願っていただきたいと心から願っています。
この日は他に、佐藤眞作曲「蔵王」全曲、山田耕筰作曲、増田順平編曲「この道」「烏の番雀の番」「あわて床屋」「青蛙」、今大人気の作曲家、松下耕作曲「三つの詩篇」より「谷川を求める鹿のように」を歌いました。
良いハーモニーをぜひ作っていただけますように。
そして、皆さんが素晴らしい音楽で感動していただけますように。