♯や♭がいっぱいついてて楽譜が読みにくいのには意味がある
J.S.バッハ作曲の平均律クラヴィーア曲集。
音楽の旧約聖書とも言われています。
1巻と2巻があり、それぞれ24曲、音楽の基本である24調の調性から作られています。
音楽にはハ長調やト短調など、様々な調性があり、それぞれ色彩や性格があります。
例えば、変ホ長調は壮大で朗々とした響きがして英雄的な性格があります。ベートーヴェンの「英雄」交響曲やピアノ協奏曲「皇帝」、ホルストの『惑星』より「木星」などは変ホ長調ですね。
ホ短調はメンデルスゾーン作曲のヴァイオリン協奏曲や、ナルシソ・イエペスの「禁じられた遊び」のような、愁いのあるセンチメンタルな感情を誘うような性格を持っています。
だから、バッハの平均律を聴くと、なぜバッハがわざわざ24調で作曲したのかがよく分かります。
バッハには「インベンション」という子供向けの平均律クラヴーィーア曲集のような作品集があります。これを子供の頃に、いろいろな調性に移調して弾くトレーニングを行いました。例えば、ハ長調の曲を、その場でト長調で弾いたり、ヘ長調で弾いたりするわけです。
そのとき感じたのは、同じハ長調の曲でも、ホ長調で弾くと、響きも性格も違って聴こえるということです。
トレーニングの一環で行ったことだったのですが、やはり、バッハがもともと書いてあった調性が一番しっくりくるということがよく分かりました。
面倒くさがりやの私は子供の頃、「なんでこんなに♯や♭がいっぱいついてて、楽譜が読みにくいな。ぜんぶハ長調かイ短調にしてくれればいいのに」と思っていたのですが、ちゃんと#や♭がついている意味があったのです。
私が運営と指導を行っている合唱団「コール・リバティスト」では、「楽譜にドレミを書きこんでもいいから、できるだけ音符を読むことに慣れてくださいね」と言っています。
「音符読むの苦手なんです~」という方々も、少しずつですがみんなと一緒に読めるようになってきています。
リバティストでは、中田喜直さんや、萩原英彦さんを歌いましたし、また、今後も素晴らしい日本の作品にもチャレンジしていきたいと思っています。そのためには、やはり、音楽の性格を感じてくださるように、今後も音符の読みを丁寧にガイドしていこうと思っています。
読めるようになると、楽譜は早くマスターできるし、音楽性はついてくるし、良いことが多いと思います。
「音楽の成績が悪かったんだ~」という人でも、日本人であるからには日本最高の芸術を歌って感動していただきたい。
そんな思いで、ドレミ。やっています。