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ライフワークとしての学びを考えます。

失敗を許してくれない世の中ってのはずいぶんキツい 失敗ぐらいさせてやれって

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現在ご活躍しているある音楽家の学生時代、練習室の譜面台に漫画をおいていたとおっしゃっていて、現在のお姿を想像できるような方ではなかったのだそうです。
しかし、卒業なさってから何度も舞台を踏まれるうちに、厳しいお客様の前で磨かれたのでしょう。大変なご努力をされたのだと思います。
 
私の尊敬する指揮者のY先生の口癖が、
「やってるうちに上手くなる。人生やらなきゃソンソン!」
でした。
 
「プロのオーケストラの指揮なんて、普通何度も練習できるもんじゃない。最初は恥ずかしい思いをたくさんした。でも、当時は皆のおかげで何度もやらせてもらえた。不思議なことだが、やっているうちに出来るようになるんだ。”やったもん勝ち”なんだよ。」
 
その言葉が忘れられません。
 
Y先生は「お金がなかった」と短大卒業で、公立中学の音楽の先生をしながら日本を代表するような指揮者、渡邉暁雄氏の下で修行を積んだ苦労の人です。抜群の直観の鋭さと、人間力、「地獄耳」と言われるほどの耳の良さで才能もあったのでしょうけれど、失敗しても「これでもか、これでもか」と困難にチャレンジする精神に周囲の人たちが心を動かされたに違いありません。
 
しかし、最近は就職難や景気のせいかもしれませんが、失敗が許されない世の中になっているような気がします。
 
もちろん、甘い考えで準備もなく失敗するのは良くありません。
しかし、経験の浅い才能のある人達が真剣に挑戦できる環境というのが、将来性のある豊かな社会のなのではないかと感じました。
 
日本経済新聞夕刊の連載小説「ファミレス」は最近気に入って読んでいます。7月23日第141回の中から引用します。

     ・・・・・(以下引用)・・・・・
 
「『やっちまったなあ、まいったなあ』っていう失敗を許してくれない世の中ってのは、ずいぶんキツいよな。」
「ええ、僕もそう思います。」
「若いうちに失敗ぐらいさせてやれって」
俺を見ろ、この俺サマを、とおどけても、康文の表情は真剣だった。
「笑って振り返ることのできる後悔は人間の器をでっかくしてくれるけど、取り返しのつかない後悔ってのは、絶望しか生まないからなあ・・・」
 
     ・・・・・(以上引用)・・・・・

「失敗を許されない」ということは、確実に点を取る体制に入る。守りに入る。
 
田坂広志氏の「これから働き方はどう変わるのか」という著書の中で、「いかなる事業も失敗しない事業はない。もともと、新事業やベンチャー企業というものは成功確率の低いものです」と書かれています。だから、社会起業家の資質として、何度失敗しても挫けずに挑戦し続けなさい、失敗から学びながら修正していけばよい、その事業はいつか成功する。とあります。
 
「失敗しても命までとられるわけでなし。」
最後腹をくくるときの処方箋として、いつもそう考えます。
 
世の中に対して「自分を信じてくれ」と叫んでも、自分を心から信じることができない人を誰が信じようか。
まずは、自分を信じることができるようになりたい。無条件に。

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