永遠に続くレッスン
10年以上前言われていたことの意味が突然分かることがあります。
演奏する作品は大人のものです。作曲家の生々しい人生がそこに生きている。
文学や映画、絵画から感じることもたくさんありますが、やはり自分が経験したことは説得力があります。
最近、過去学んだことがやっと消化され始めてきたような気がします。
2012年4月21日日経新聞「交遊抄」にソプラノ歌手佐藤しのぶさんの記事が掲載されていましたのでご紹介します。
・・・・・(以下引用)・・・・・
故中山悌一先生のレッスンはいつも殺気立っていた。目をつぶり腕を組んで奥歯をかみしめ、圧倒的な存在感を放つ。トイレには緊張でおなかが痛い生徒の行列ができるほどだった。先生は二期会を創設し、日本の声楽界の礎を築いた巨匠。
(中略)
オペラは人生が凝縮された世界。「全ての人間の心を理解せよ」「歌手は頭を使わにゃならん」が先生の口癖だったが、当時の私は若すぎた。数年後のプロデビュー。原作と楽譜を何度も読み、頭が擦り切れるほど考えた。「良くやった」。公演後先生の言葉に舞台裏で思い切り泣いてしまった。当時は理解できなくて「?」が残った教えもあった。だが数十年たつうち突然その意味が分かる瞬間が何度も訪れた。
・・・・・(以上引用)・・・・・
中山悌一さんを知る声楽家は、全員「大変厳しかった」と口を揃えるほどの伝説の方です。
厳しさというよりは、真剣であったのだと思います。
プロでやっていくには、さらに厳しい世界を生きていかなくてはなりません。厳しさは中山悌一さんの慈愛であったのかもしれませんね。
真剣で、言葉に重みがあり、魂が宿る。
そういうレッスンは、心に深く刻みこまれ、いつまでも忘れることがありません。
亡くなったとしても、言葉は生き続け、何かのきっかけでつかむ瞬間が訪れる。まさに永遠に続くレッスンなのですね。