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「あいつ二重人格だから」 あの人に任せろ

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「多重人格者」
 
子供の頃見たある映画で初めて知った言葉です。
それ以来、多重人格というと尋常ではないイメージを持ちました。

今日は、この多重人格の話ではありません。
 
ベルリン・フィルの元ティンパニー奏者のヴェルナー・テーリヒェン著「フルトヴェングラーかカラヤンか」や、川口マーン恵美著「証言・フルトヴェングラーかカラヤンか」を読むと、指揮者のカラヤンについて良く言う人は、「カラヤンは面倒見がよくて優しく、人にとても気を遣う」。逆に、そうでない人は徹底的に悪く言っている。旧ソ連出身のピアニスト、リヒテルは「あのキザ野郎」くらいに思っていて、カラヤンが大嫌いだったようですね。
 
仕事上の利益関係もあったかもしれませんが、カラヤンは、ある意味多重人格であったのかもしれないと思っています。
 
20世紀最大の指揮者とも言われる、フルトヴェングラー。ヴェスリンク著「フルトヴェングラー 足跡ー不滅の巨匠」によると「フルトヴェングラーは矛盾だらけの性格をしていた。功名心が強くて嫉妬深く、高潔でいながら見栄っ張り、小心者でいて英雄、子供でいて英知をそなえた大人物だった」と書かれています。人間の全ての面を合わせ持った複雑な性格の持ち主であったようです。

 
ある指揮者の先生とお仕事を一緒にしたことがあるのですが、その先生は楽団員の前では大変厳しく強気な指導で知られていました。そうは言っても、明るく豪放磊落な雰囲気で、誰も彼を悪く言う人はいません。
 
しかし、一歩仕事場を離れると、「本番が怖くて眠れない。」と、不安いっぱいに青ざめている。
意地悪で、猜疑心の塊で、真面目。とても細かいことにこだわり、演奏でみせるスケールの大きい音楽からは想像もできないのです。
 
その人格を、意識しているのかしていないのか分からないのですが、使い分けているといふうには感じません。まったく自然のままにギアチェンジしている。
 
私は、カリスマと言われるような素晴らしいリーダーになればなるほど、多重人格者なのではないかと思えます。
 
組織を引っ張る熱くなる自分。
そして、もう一人の冷静な自分。
 
少なくとも、リーダーはこの2つが同時に存在すると考えます。
 
スティーブ・ジョブズの伝記を読むと、やはり様々な顔を持つ人であったようです。
作品を創る芸術家のような感覚的なところと、厳しい交渉をまとめる冷静沈着な面。
 
私は、どんな人でも多重人格を持ち合わせていると思います。
 
ただ、常識的に考えると、表裏が無いほうが良い人に見えます。だから、普通の人はせっかく持っているその人格を封じ込めてしまいます。
「OOの人」「XXの人」と限定してしまうほうが安心だからです。子供でも親に「あなたはこういう子だから」といわれて育つ子が多い気がしています。
限定した途端、可能性は閉じておとなしくなってしまう。
しかし、意図的に演じようとすると、今度は操作主義に走ってしまい、周囲に見透かされてしまう。

自分の多重な人格を否定しないで見つめられることができるか。
そこには素晴らしい可能性が眠っているのだと思います。

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