小さな声でも合っているほうが強く聴こえる
合唱というのは、まことに社会一般にある集団組織と基本は同じだということが、よく分かった日でした。
2012年1月21日合唱団コール・リバティストに東混テノール歌手で合唱指導者の秋島先生をお招きしての稽古を行いました。
この日は中田喜直作曲の合唱組曲「海の構図」より「神話の巨人」を歌いました。
歌の中で、音としてのパワーがほしいところがあるのですが、そこを先生は「パート内で合わせることを気をつけるだけで良いのです」とおっしゃいます。
音のパワーが欲しければ、一人一人が大きな声を出して頑張らなくてはいけないと思いがちですが、そうではないのです。
「なんとなく合っている。でも正確には合っていない。」
「誰か一人だけがボリュームが高くて全体を引っ張っているが、合っていない」
合唱をやっているとよくある光景です。
合っていないで歌っていると、いくら大きな声の人がいたとしても、それぞれが消しあってしまいます。
そのため、聴いているほうからすると、合っていない場合、結果的に弱く聴こえてしまうという物理現象が起きてしまいます。
だから、一人一人が小さい声でもいいから、合っている方がより遠くまで聴こえるわけです。
「神話の巨人」は、リズムが複雑なところがあり、理論を理解していないと、ずれて歌ってしまいがちです。
「なんとなく耳覚えで」歌ってしまうことが多いと思いますが、そうすると、そのときの気分でブレが出てしまいますので、一度しっかり分かっておくと良いですね。
まずは理論と音の理解。
そして、パート内で「合わせよう」という気持ちが必要ですね
以前、田中信昭先生が、
「合唱は社会や人生にも通じるのではないかと思っている。満員電車に乗ると苦しいが、皆がいるからこそ、安い運賃で移動できるのだ、と私は考える。隣人がいるから合唱できる。」
とおっしゃっていたことに深い感銘を受けたことがありますが、まさに集団組織の大事なエッセンスを言い当てておられると思いました。
もう一ヵ所、珍しくアルトが主役の場面があるのですが、そこにソプラノの副旋律が乗っています。
ここに、中田さんはわざわざ「優美に。しかしフォルテ(強く)にならないで。メゾフォルテ(中くらいの強さ。フォルテより弱い)で豊かな感じで」と書かれています。
ソプラノというのは、かなりの大部分において旋律を受け持つパート。どうしても「主役感」が強くなりがちなのですね。
そこを十分かってお書きになっているのだろうと想像します。
集団組織、集団音楽というものは、やはり満員電車の理論。
それぞれが忘れずに歌っていきたいものですね。
この日は、「神話の巨人」の他に「海女礼賛」を歌いました。
ずいぶん歌っていなくて忘れていましたね。
これから、演奏会に向けて頑張りましょう。