巨星堕つ 林光さんの死
作曲家の林光さんは昨年9月下旬、自宅前で倒れたときに頭を打ち、病院に運ばれ入院。療養していたそうですが、1月5日に80歳でお亡くなりになりました。
林さんといえば、「日本抒情歌集」を合唱団でも多数とりあげて歌っており、思い入れの深い作曲家です。
また、日本でも数少ないプロ合唱団、東京混声合唱団(東混:とうこん)は、林さんの作品を数多く演奏しています。
東混の先生方にもご指導いただいたり、お世話になっている関係で、林さんの演奏会「八月のまつり」はよくうかがいました。今でも「原爆小景」の凄まじい世界は深く心に刻み込まれています。
年齢を感じさせない若々しさで、弾き振り(ピアノを弾きながら指揮)をし、腕が長くて、指揮をすると手が触手のように伸びていくような感じが独特でした。そんなお姿を今年も見られるものとばかり思っていたので、残念でなりません。
林さんの作品は意外と演奏が難しく、ピアノの伴奏も奥が深いのが特徴です。
「日本抒情歌集」、「まちぼうけ」のピアノ前奏は特に弾き難く、指揮者の岩城宏之さんが、東混の演奏会で林さんがいつも伴奏で弾き間違えるのが嬉しくて、林さんがピアノを弾くときは必ず「まちぼうけ」を選曲したのだとか。
自分が弾きやすいように作らなかったのが、また林さんらしいのでしょうね。
林さんは、シリアスな作品も多いのですが、例えばNHK大河ドラマ「国盗り物語」「花神」「山河燃ゆ」の音楽を作曲しているので、ご存知の方もいらっしゃると思います。
どんどん難解になっていくこの現代音楽の世界で、聴衆の心に入っていきやすい音楽を書いてくださっていた作曲家でもあります。
中でも交響曲ト長調は、第3楽章に青森民謡を使ったところや、第4楽章のすがすがしい明るさがあり、私たちにも現代音楽を抵抗なく愉しむことができる素晴らしい作品だと思います。
約5年前に先に亡くなられた岩城さんが、きっと、天国で寂しくなってしまったのかもしれませんね。
私たちのために素晴らしい作品を遺してくださり有り難うございました。
ご冥福をお祈りいたします。
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