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人が120%の力を発揮するためのスイッチ それは緊張

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ベルリン・フィルやウィーン・フィルは、演奏会で常に120%の力を出すと言います。
 
世界一流の圧倒的な演奏レベルを持つのだから100%の力を出せれば上出来のはず。しかし、毎回精神を高め、常に120%を目指し、そして到達する。そこに芸術家としての信念とプライドを感じさせます
 
私は、その人自身の力を常に100%発揮するタイプと、それ以上発揮するタイプの2種類があると考えます
 
それでは「私は、すごく準備をして努力していても、本番で極度に緊張してしまい自分の力を発揮できない」という方はどうか。
 
それこそ、120%の可能性を秘めた方だと思っています。
 
指揮者のY先生は、小澤征爾さんを尊敬し、レッスンのときによく小澤さんのことを例にとって話してくださいました。
「小澤征爾さんの師匠である齋藤秀雄さんは、小澤さんについてこういっていたそうだ。"小澤征爾より耳のいい指揮者はたくさんいる。しかし、彼のどこがちがうか。火事場の馬鹿力だよ。ここ一番で信じられないような力を発揮する。」
 
家に火事が起きて、普段力もないようなかよわい女性がハッと気がついたら大きなタンスを持ち上げて外に運び出していた、というような力。
 
人間は、普段発揮できないような眠っている力を発揮するためのスイッチがあります。
もって生まれた本能と経験により、そのスイッチをコントロールする力を本来身につけているのです。
 
では、そのスイッチとは・・・「緊張」です。
 
人間が緊張するとアドレナリンというホルモンが出て交感神経を興奮させるため、呼吸が多くなり、血圧が上がって、食欲も出なくなり、手が冷たくなったり、落ち着きがなくなる状態になります。
 
緊張状態というのは、戦うために必要なエネルギーを集中させる人類古来からの反応です。敵が現れたとき、酸素をたくさん送り込み、消化活動を停止しエネルギーを重要な器官に集め、血管を収縮し、攻撃されたとき出血量を抑えるという働きがあります。
また、緊張すると脳波は緊張を示すβ波になり、意識は分散し、考えなくてもいいような雑多なことが頭に浮かびますが、こうなることで、どの方向からの攻撃にも対応でき、あらゆる戦闘方法の対応策を瞬時に探り、選択することが可能になるそうです。
 
つまり緊張するということは、生き残るために戦闘態勢に入ったことを意味するのです。
生きるか死ぬかギリギリのところで能力以上のものを引き出そうとする生命の知恵。人間は本来そのような力を持っているのです。
 
だから、「緊張」を否定するのではなく、それは「自分の力以上のものを出すための大事なスイッチなんだ」と思うようにします。緊張してきたらチャンスなのです。
そこをコントロールできるようになると、120%の力を発揮できるようになっていくのです。
 
小澤征爾さんは、舞台に出る直前に、師匠のバーンスタインと同じように「何か木製のものをさわる」ということを行っています。
そこで、何か無意識の領域に働きかけるように緊張とのバランスをとっているのでしょう。
イチロー選手が、球場に入る前に常に同じ行動をとるのも同じような理由だと思います。

もしかしたら、最初のうちは失敗するかもしれません。いや、だんだん上手くいくようになってきたと思っても、またすぐに失敗することもあると思います。
しかし、自分の中の未知の力を発揮するために、緊張と向き合うことがとても大事なことなのだと考えます。
 
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