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上手すぎて上手すぎて物足りないと思えるほど素晴らしい

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先日のブログで書いた、薄幸の天才女流チェリスト、ジュクリーヌ・デュ・プレ。
彼女は難病でもある多発性硬化症を発病し、わずか10年あまりの演奏活動に終止符を打つのです。
 
そのデュ・プレの使用していた楽器は、最高の弦楽器の一つである、名器ダヴィドフ・ストラディヴァリウス。
 
彼女の死後、ダヴィドフは中国人チェリスト、ヨー・ヨー・マ(1955~)に受け継がれています。
 
ヨーヨー・マは、技術と音色の素晴らしさは、現在世界最高だと思います。また、チェロというかなり音程の不安定になりやすい楽器を、ここまで完璧に弾きこなすチェリストはいないでしょう。
パーソナリティも親しみやすく、マスタークラスでの教え方は、生徒の気持ちに降りてきて、新しいアイデアや、独自の演奏方法を惜しげもなくオープンにしていて、本当に素晴らしかった。
 
私は、同じドヴォルザークのチェロコンチェルトを聴くならば、どうしてもデュ・プレを聴いてしまうのですが、ヨーヨー・マも素晴らしいと思います。
 
上手さでいったら本当に上手い。
私は、どうしてもデュ・プレと比較してしまうのですが、彼女と比べると上手すぎて物足りない、とまで思ってしまうほど。贅沢な悩みです。
 
一見、感情的に見えて、非常に知的にスコアを読み込んでいるのがヨー・ヨー・マの特徴だと思います。
しかし、クールな演奏というとそんなことは全くなく、激しく熱いパッションを伴いながら、はみ出すことなく、よくぞここまでの美しい音を維持できると、その鉄の意志と技術に圧倒されてしまうのです。
 
本日は、ロリン・マゼール指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で、ヨーヨー・マのドヴォルザークのチェロコンチェルトを聴いていただきましょうか。
 
2/2の、0:31心が震え、あたかもすすり泣くような音色で始めるところ。きっと計算されつくしているであろうポルタメント(音のずり上げすり下げ)が、まったく自然に心に忍び込んできます。
 
2/2の、2:32からは、もう向かうところ敵なしともいえる、腕が鳴るようなテクニック。
そしてその後の3:20からの、陶酔するような極上の最弱音を聴いてください!続いて扇情的なポルタメントが現れて、心を狂わせるようです。
 
それでは、どうぞヨー・ヨー・マの演奏、お楽しみください。

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