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人生を切り開く一瞬の判断は最初数秒間にやってくる

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「炎のコバケン」とも言われる指揮者の小林研一郎さんの演奏会。ある時期、本当によく通いました。
 
その小林さんの半生が2011年11月28日から5日間日本経済新聞にて連載されていて、あの情熱的な演奏が心に蘇ってきました。
 
才能にあふれる小林さんといえども、最初から活躍していたわけではありません。
あるきっかけがあったのです。
 
それは、私から見れば「その一瞬の判断が人生を分けた」とさえ思えます。
 
コンクールは若い才能を発掘することが目的ですから大抵の年齢制限は20代まで。34歳の小林さんが運命を賭けて受けたブタペスト指揮者コンクールは35歳までという当時珍しいものでした。周囲は若く才能あふれる指揮者たちばかりの中、34歳の挑戦です。
 
第一回目11月28日の記事に、その人生を分けた一瞬について書かれていましたのでご紹介します。

     ・・・・・(以下引用)・・・・・
 
ハンガリーで迎えた一次試験の日。会場で課題2曲をくじで引く。1つ目はベートーベンの交響曲第1番の第2楽章。「落ちた」と思った。あまりに単純でどうしていいか分からない曲だ。2つ目は「セビリャの理髪師」序曲。これは指揮したことがあるから手の内に入っている。
くじの順に演奏するのが規則だが、舞台袖から指揮台までの10メートルほどを歩く間に「ひっくり返せばいい」とひらめき、オーケストラに向かって「セビリャ!」と言った。団員は不意打ちに驚いていたが、勢いにのまれて応じてくれた。そして、まるでイタリアの海のように豊かな音が響き始めた。
 
     ・・・・・(以上引用)・・・・・

小林さんの作戦は大成功。奏者は乗りに乗って、終わるとオーケストラ団員から拍手が上がるほどだったのです。その後、決勝に勝ち進み優勝をおさめることになります。
 
この作戦、10メートルですから、ほんの1~2秒の判断だったのだと思います。
 
規則の厳しいコンクールで一次予選ですから、普通ならば安全運転をしたくなります。そんなところで演奏順を守らなかった場合、いくら良い演奏をしても、最悪それを理由に落とされる可能性もあります。しかも小林さんの場合、このコンクールがだめだったらもう後がない。
また、これが不意打ちだったのも功を奏したと思います。あらかじめ順番変えることを相談していたら断られていた可能性だってあるのです。
 
退路を断ったところでの命がけの指揮だったのではないかと想像します。
 
判断の素晴らしかったところは、小林さんを知らない初めてのオーケストラで、得意な「セビリャの理髪師」から入ったところだと思います。
相手はコンクールの予選を「お仕事」で弾いている、いわばルーチンしやすい状況。そこに、いきなり予想しない曲が来て、驚きと共に「何かが違う」というスイッチが入ったのではないかと思います。一度スイッチが入れば、次の不得意な作品も上手くいく。普通に演奏していたらば、いくら実力のある小林さんでも、そこまで良い演奏になっていなかったかもしれません。
 
もちろん、普段の準備や努力も必要です。
しかし、ここ一番の大事な場面において一瞬の判断が出来るかどうか。
それが運気を呼び寄せ、人生を切り開くことになるのだと思います。
 

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