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伝えるための「勇気」

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ディズニーの「フアンタジア」。
 
ウォルト・ディズニーと、指揮者のレオポルド・ストコフスキー(1882~1977)製作のクラシック音楽を題材とした映画です。
 
J.S.バッハ の「トッカータとフーガ ニ短調」、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」、ストラヴィンスキー の「春の祭典」、ベートーヴェンの「田園」、シューベルトの「アヴェ・マリア」など、クラッシックの名曲からイメージして作られたディズニーの映像を見事に組み合わせ、芸術性の高い映画となっています。これを見て、クラシックのファンになった方も大勢いらしたのではないでしょうか。
 
「春の祭典」が地球創世記~恐竜時代になっているのには賛否両論あったそうですが、作品の持つプリミティブな魅力を存分に感じさせてくれました。これもまた一つの素晴らしい解釈だと思います。
 
ストコフスキーの音楽は愉しい。音楽界のエンターテイナーという言葉がぴったりの人です。
「一本の棒より10本の指の方がより豊かな音楽を引き出せる」と語り、指揮棒を使わずにオーケストラを統率していました。
今でこそ世界的なオーケストラである、フィラデルフィア管弦楽団を育てたのはストコフスキーです。困難も多く、保守的なオーケストラ理事会との対立、経済的な困難には私財をなげうつようなこともあり、熱いパッションを持つ芸術至上主義の一面も感じさせてくれます。
 
彼は、いかにクラシックを退屈させずに面白く聴かせるか、ということに命をかけた人です。
そのために、長い音や休符、また繰り返しをカットし、楽譜を自らアレンジしてより効果を高めるようにし、指定のない楽器を加えたり、また指定の楽器を別の楽器に変えてしまったり、お決まりのオーケストラの配置を変えたり・・・。ストコフスキー・サウンドと呼ばれる、華やかで流麗な音の世界を作り上げました。
 
一見このような演奏をすると、単に外面的で技術的なように思えますがそうではありません。
 
その残された演奏を聴くと、心の中に持つ深い感情が湧き上がって、それが音楽に結びついている。切れば温かい血の出るような音楽なのです。さらにストコフスキーの人並みはずれた表現力で、人工的に手を入れた作品から、彼の意図が意図している以上に感動的に伝わってきます。
 
リムスキー=コルサコフ作曲の「シェラザード」などは最高の大芝居を打っていて、聴いていると、まるで自分が荒れ狂う海で船に乗っているような気分にさせる手に汗握る熱演です。
 
この作品は93歳でもう一度録音していますが、なんと新しいチャレンジをしています。彼は、同じ作品を同じように指揮せずに、毎回新しい表現を試していました。何歳になっても安住せず、開拓者でありつづける情熱と好奇心を持っていたのですね。
 
「勇気を持って伝えなさい。」
 
その音楽から、ストコフスキーのメッセージが聞こえてくるようです。伝えるためにはどんな手を使ってでも伝えてみせるという気概。いつも勇気づけられずにはいられません。

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