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ライフワークとしての学びを考えます。

年をとればとるほど感性は瑞々しくなっていく

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年をとると瑞々しい感性が失われてくるなどと言われることがあります。
 
本当にそうなのでしょうか?
 
ラトヴィア(旧ソ連)出身のチェリスト、ミッシャ・マイスキー(1948年~)を見ていると、そんなことはないように思えます。
 
マイスキーは今までに2回、バッハのチェロ組曲全曲を録音しています。
一回目は1985年、二回目は1999年。
両方とも素晴らしいのですが、そこにはある大きな違いが見られるのです
 
Augustraitというサイトに、マイスキーついて書いた記事がありましたのでご紹介いたします。

     ・・・・・(以下引用)・・・・・
 
2002年にNHKが放送した「未来への教室」でマイスキーは、ブリュッセルの自宅に10代の子どもたちを招き、無伴奏チェロ組曲第1番を聴き比べさせた。3人のチェリストが同じ曲を弾いているのだが、1番目はパブロ・カザルス(Pablo Casals)、2番目はアンナー・ビルスマ(Anner Bylsma)、3番目と4番目は、「カザルスたちほど有名ではない、ある音楽家の演奏」である。
(中略)
マイスキーは彼らに問う。「3番目と4番目の曲は、どちらが若く、またどちらが年をとった演奏家だと思いましたか?」その場にいたほとんどの子は、「4番目がテンポも速いので若く、3番目が落ち着いていて年をとっている感じがする」と答えた。しかし、たった一人だけ逆の意見を述べる子がいた。「3番目がゆっくりで重厚な感じだけれど、少しぎこちない感じがします。でも4番目は速いテンポでも、自由で、楽しそうで、経験豊かな感じがします。だからぼくは、4番目のほうが好きです」これを聞いたマイスキーは、3番目と4番目の演奏は自分の手によるものだと明かす。演奏の時期は、3番目が1985年録音、4番目が1999年録音なのだと。つまり、悠然と落ち着いて聞こえる演奏は若いマイスキー、速く自由に、飛翔するような解釈の演奏は、最近のマイスキーの音楽だったのである。

     ・・・・・(以上引用)・・・・・

マイスキーの2回目の録音は、バッハというある種スタイルという制約のある音楽の中で、より軽やかに自由に振舞っているように感じられます。
 
マイスキーは「為替法違反」という理由で逮捕され、18ヶ月間強制収容所に送られた経験をしています。そのとき「生に感謝する」ことを学び、「いつかここを出て、再びチェロを弾きたい。その時にはチェロの演奏にすべてを懸ける。人生のすべてを捧げる」と胸に刻み込んだそうです。
 
辛い過去を持ちながら、屈折することなく、年齢を重ねれば重ねるほど、その音楽はよりのびのびと豊かな音楽と自由な魂を表現しています。
 
音楽をするには年をとりすぎたから、なんて思う必要はありません。年齢を重ねたからこそ感じる豊かな世界がある。
 
「年を取るのが楽しみだ。」
そういう生き方をしてみたいと思う自分がいるのです。

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