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ピアノの椅子 高さを変えるにはワケがある

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「やっぱり低い椅子でやってみよう」と決心したことがあります。
 
ピアノの椅子は、たいてい高さを上下調節できるように出来ています。
グレン・グールドなどは、最初から固定しているものすごく低い椅子を持ち込んで録音していましたが、ほとんどのピアニストは会場においてある椅子を自分の都合のよい高さに調節して演奏します。
 
ある時期、音色のコントロールを、自分がイメージするように作れないことがありました。学生時代は「音が割れる(汚い)」「音が硬い」とよく指摘されていたのです。ある日、ホロヴィッツのVTRを見たら、結構低い椅子で弾いています。ホロヴィッツのような美しい音に憧れていた私は、当時理由も考えず早速低い椅子に変える決心をしました。
最初はかえって弾きにくかったのですが、慣れてくると不思議なことに音色がかなり変わってきました。音が硬くなる原因の一つが、実は「高すぎる椅子」にあったのです。
 
私は腕がひょろ長いので、椅子の高さの調節に気を遣う必要があったのですね。
 
温かく、まろやかな音色を得るためには、鍵盤に対して「寝かせた指のポジション」に持っていく必要があります。(硬質で華やかな音色にしたいときは指を垂直にする)
 
「寝かせた指のポジション」にするためには、基本的に手は水平に保ちたいので、肘の角度は90度より広くなければなりません。
 
もし、腕の長い人が高い椅子でこの角度を直角より広くとるならば、鍵盤との必要な距離をとるために、ピアノからあまりに離れてすわらなければならず、とても座りずらいですし、コントロールもしにくくなります。
 
単に椅子が低ければいいというわけではなく、その人の体型によって椅子の高さはかなり変わってきます。
 
私が見る限り、小柄の人はどちらかというと高めの椅子に座る傾向があり、大柄な人は低めが多いようですね。
 
低い椅子で有名なミケランジェリなどは、かなりの長身だったようです。
 
また、同じメーカーのピアノでも、微妙に高さが違っていたりします。
「この機種ならこの高さ」と決めていて、ホールに入っていざ座ってみると高さを変えなくてはならないこともあるので注意が必要です。
 
ピアニストがピアノ椅子の高さを変えるのは大きな意味があったのです。

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