本質的でないレビュー指摘を減らすための試行を紹介した日経ITproの記事
要求ドキュメントや設計ドキュメントをレビューにおいて、誤字脱字の指摘の割合が高く本質的な欠陥の指摘が少ないというのは、どのような組織、プロジェクト、チームにおいても共通の悩みでしょう。
そのようなレビューを改善することを目的として、レビューで検出すべき欠陥の条件を変えて実務者の方にご協力いただいて検出結果を比較する試行をしました。
結果は論文で報告しています(S. Morisaki Y. Kamei K. Matsumoto: Experimental Evaluation of Effect of Specifying a Focused Defect Type in Software Inspection: PDFはこちらから)。ほぼ同じ内容の記事を以前に日経SYSTEMS(雑誌)に寄稿していました。昨日Web記事として日経ITproのサイトにも掲載いただきました。こちらから読めます。
非常に簡単な方法ですが「対象ソフトウェアに特に求められる品質や機能を勘案してどのような欠陥を検出すべきか話し合った上でその欠陥を検出してください」というお願いをすることによって、本質的な欠陥指摘が増えるか(誤字脱字の指摘が減るか)どうかを試行しています。
お願いは3種類で、以下のとおりです。
- 普段どおりにレビューしてください。
- 最初に対象ソフトウェアに特に求められる品質や機能を勘案してどのような欠陥を検出すべきか話し合い、その欠陥を検出してください。
- 上述2に加え、検出の度に話し合った欠陥に分類できるものかを相談してください。
3種類それぞれに2ずつチームを割り当てて結果を比較しました。1には誤字脱字の指摘が含まれる傾向がありました。2では、誤字脱字がかなりなくなり、3ではほとんど検出されませんでした。また、2では事前に相談して決めた欠陥に該当する欠陥や該当しないけれど本質的な欠陥が検出されました。3では事前に相談して決めた欠陥に該当する欠陥以外はほとんど検出されませんでした。
誤字脱字は目にとまりやすい欠陥であることと「なんでこんな状態でレビューさせるんだ」という不満を欠陥指摘によって作成者にぶつけようとする傾向があり、単純に「普段通り」というお願いに対して、誤字脱字を指摘してしまうという結果になってしまったと考えられます。
性能問題のような致命欠陥は時間をかけてじっくり考えないと検出が難しいので、どうしても手軽に検出できてしまう誤字脱字に目がとまりがちです。もちろん、誤字脱字が致命欠陥を引き起こすドキュメントであれば適切なのですが。