SKYACTIVにおけるモデルベース開発の講演で感じた「納得」「信用」
ET West 2012で登壇の機会をいただいたので同日の基調講演を聴講しました。マツダ原田氏の「超低燃費SKYACTIVテクノロジー誕生を支えたモデルベース開発 ~複雑巨大化するモノづくりへの挑戦~ 」です。IPA ソフトウェアエンジニアリングセンターが刊行しているSEC Journalにも講演内容が掲載されています。PDFでこちら(29号を選んでください)からダウンロードできます。
PDFはET 2011の基調講演の内容だそうですが、ET West 2012の際にもポイントとなる部分は類似していました。PDFをご覧いただければ興味深い内容であることがおわかりいただけると思います。
マツダの自動車の開発ではモデルベースでの開発が浸透しており、そのきっかけは1991年のルマンという24時間耐久自動車レースでモデル、シミュレーションによる車両の設計と最良の運転方法(コース取りや加減速)にあるそうです。規定の燃料で走る必要があり、路面のモデルを作成してレーサが最速と考えた運転方法とモデル、シミュレーションによる運転方法を比較したそうです。結果として、モデル、シミュレーションのほうがよい結果であることがわかったそうです。
最初は、モデル、シミュレーションの結果を信じる人が少なく、ある自動車競技用コースでシミュレーション・モデル上で最速の運転方法とレーサが最速と考える運転方法とを比較したそうです。ルマンは公道を使ったレースなので、コースで実施したとのこと。その結果モデル、シミュレーションのほうが速い結果となったそうです。
それ以来エンジニアのモデル、シミュレーションへの考え方がかわったそうで、基本的にモデル、シミュレーションの結果をもって開発を進めているそうです。ソフトウェアもモデルベースで開発されているそうです。
私が興味深いと思ったことは、モデルベースの開発を昔から取り組んでいらっしゃること、ルマンでの実績によって全員がモデル、シミュレーションの結果を信じるようになったことです。もしも、ソフトウェアメトリクスについても同様に全員が信じるようになったり、その上での議論ができるようになったら、結果は変わってくるのではないかと思っています。
なんとなく信じにくい、なんとなくウソっぽいという前提で使っていることに疑問を持っている方もいらっしゃると思います。モデルやシミュレーションはメトリクスと比較すると精度が高いとも考えられますが、グーグルでのバグ予測(本ブログの過去エントリ)のことも考えると、精度だけが問題ではないように思います。
もし全員が信用し納得した上でソフトウェア開発におけるメトリクスが用いられたらどんなことができるでしょうか。