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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

正解を1つだけと仮定して他の意見を認めない

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他人が他に正解はなく自身を正当化しようとするところを見たことは誰にでもあるのではないでしょうか。また、知らず知らずのうちに自分がそうなっていることもあるかもしれません。

本ブログはソフトウェア開発に関することをテーマとしているので、ここを読んでくださっている方にもう少し身近な例として「正解」を「現場」と変えて紹介してみたいと思います。現実には開発の現場は多種多様でひとくくりに「現場では」というふうに抽象化するのは適切でない場合が多いのではないでしょうか。自身の現場を様々な現場の代表とする考えは必ずしも適切とは限りません。特に規模が大きいソフトウェア、高い信頼性が求められるソフトウェア、その分野を専業としている場合には、特にその傾向が強くなるように思います。「自分が関わっている現場では」というのが適切ではないでしょうか。

たとえば、多種多様なバックグラウンドを持つ数人~十数人の集まりがあり、その中で自分1人だけがエンタープライズ系のソフトウェア開発に携わっているとします。他の方は組込みソフトウェアを開発しているとしいます。そうすると自分が知っていることを「エンタープライズ系では」と言ってしまったとします。それは厳密には「私が携わっているプロジェクトでは」の可能性もあります。もちろん言葉どおりエンタープライズ系のソフトウェア開発に固有の話かもしれません。

正解が1つしかない場合と比較すると、状況や文脈(コンテキスト)に応じて複数の正解があることのほうが圧倒的に多いはずです。また、何を正解としてよいのかわからないことのほうが多いかもしれません。そして、複数の正解を受入れたり正解の判断に困ることは視野を広げてくれることにつながると思います。

正解がコンテキストに応じて複数あることを受入れるための1つの方法に、コンテキストが異なる人の前で議論や発表することが挙げられます。勉強会やコミュニティでの議論や発表の魅力の1つはここにあると思います。

少しまとまった準備時間をとってこれまでのご自身の活動を振返りたいという方にはカンファレンスやシンポジウムへの論文投稿をお勧めします。準備の時間が必要になることや聴衆のほとんどが見知らぬ人ということを意識すれば、より深い成功要因の分析、振返り、内省につながる場合が多くなるでしょう。

ここからは宣伝なのですが、そのようなシンポジウムの1つとしてソフトウェア品質シンポジウムがあります。私は今年も実行委員の1人としてシンポジウムを盛り上げていきたいと思っています。詳しくはこちらを。

論文投稿の受付けを開始しており締切りは4/18です。Webページに掲載されている初回投稿時のフォーマットを見るとわかるのですが、分量はそれほど多くありません。査読があり、採録になれば論文や発表スライドを準備いただくことになります。発表者の参加費は5,250円でカテゴリDのPDUも発給されます。

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