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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

パフォーマンスベース契約の調査研究報告書(経産省)

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情報システムを作るために必要となった費用を積み上げて対価にするのではなく、それ以外(たとえば、情報システムが生み出した価値)も考慮にいれて対価を決めようとするのがパフォーマンスベース契約。報告書は2009年7月末に公開されたもの。経産省のWeb(ここ)から閲覧できる。

同報告書では様々な観点から検討が実施された結果が記されている。その中で価格モデルとして以下の3つが紹介されている。

  • 分配モデル
  • レベル設定モデル
  • 目標値達成モデル

パフォーマンスベース契約がすぐに浸透するかというと少し時間がかかるのではないかと個人的には思っているのだが、上述の3つのモデルの例の1つとして、現行の商慣行と比較的親和性が高そうなものがあった。「目標達成モデル」の例だ。事前に設定した納期よりも早く納品できた場合に対価を上乗せする、というもの。単に早く納品するだけならば、欠陥だらけのものを納品してしまえばよいことになる。品質に関する何らかの基準を設定し、それを守っていることが前提となるよう契約しなければならないだろう。品質の基準はたとえば、稼働時間のうちの停止時間(計画停止以外)の割合ではどうだろうか。この指標はSLA(Service Level Agreement)の指標値として有名だ。

ソフトウェア開発に携わる方ならば、優秀なエンジニアから次のような話を一度は聞いたことがあるのではないだろうか。「早くプログラムを開発しても自分にインセンティブは少なく、せいぜい早くできたことを隠しておいて、技術や手法の勉強できるくらいだ。ヘタなヤツがゆっくり設計して、ゆっくりプログラムを書いて、テストでプログラムを修正しまくったほうが残業代が出たり、顧客から多くの対価が支払われるのは理不尽だ。」上で紹介したモデルの例は、この問題の解決策になるかもしれない。

ユーザは、追加の対価を支払ってでも、早く投入したい情報システムをさがしてみてはどうだろうか。上述のような状況であれば、ひょっとすると短納期と高品質の両方が手に入るかもしれない。

同文書でもう1点気になった部分がある。「クラウド」への言及だ。言及があると思ったのが、この文書を読もうとした動機の1つだがテキスト検索では見つけられなかった。パフォーマンスベース契約はクラウドとの親和性も高いように思う。

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