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小中学生の留年について

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橋下市長:小中学生に留年検討 大阪市教委に指示」などで報じられている通り、橋下徹大阪市長が「小中学生であっても目標の学力レベルに達しない場合は留年させるべきだとして、義務教育課程での留年を検討するよう市教委に指示していた」ことが話題になっています。「制度上の問題がない」とは言え、“突拍子もない提案”という印象は否めません。「制度上は留年させられるのにしてこなかった」ということは、現場では採用しにくい制度だったということの裏返しでもあります。しばしば「学校は勉強ばかりするところではない」と言われますが、友達とのつながりや学校行事などのことを考えても、習熟度だけで区別(←あえて差別とは言いません)することには疑問が残ります。

Comics27_lo■義務教育

学校教育法では、6歳から9年間の義務教育(親権者が子に教育を受けさせる義務)が定めされています。義務教育は年齢と期間で定められているので、15歳になれば完了します。つまり、小中学校のどこかで2年間留年すると、中学一年で義務教育が終了してしまうことになります。中学浪人という言葉もありますから、高校受験が15歳である必要もないのですが、義務教育期間を完了したときに中学を卒業できていなければ、大きな挫折感を味わうことになり、その後の(義務ではない)教育を受ける意欲が損なわれるのではないかと懸念せずにはいられません。

■飛び級

私は、習熟度に応じて教育を変えること自体は好ましいことだと思っています。息子の通う小学校でも、算数だけは習熟度別にクラス分けして教えていますし、私が中学時代には、一部の時間だけ一部の生徒向けの特別カリキュラムを設けるといった試みがなされていたことがあります。こういった活動は“クラスの構成”そのものに手を加えることなく、よりよい教育をなそうとする先生方の努力なのだと思います。

また、海外で比較的一般化しているのに日本で事実上採用されていないのが“飛び級”、つまり年齢に相当する学年よりも上の学年に進級する制度です。言葉は悪いですが、習熟度の低い生徒に授業を合わせて、学力の高い生徒に“我慢させる”よりも、より上の学年で学ばせる方がよい(しかも上記のような個別の編成を考えるより簡単)という考え方はあります。しかし、日本では一部の大学が17歳での入学を受け入れている程度で、極めて限定的です。飛び級は、本人の意思によって進級するもので、強制されるものでもありません。留年を考えるくらいならば、飛び級を制度的に可能にする方がよいのではないでしょうか。

■民主主義と橋下氏(再)

君が代のエントリでも書きましたが、橋下市長は民主主義な選挙によって選ばれた“多数の選択”であることに疑いの余地はありません。しかし、そこにも書いた「君が代」問題といい、今回の留年発言といい、これらの個々の提案は、本当に“多数の選択”と考えることが妥当なものでしょうか。私は国民投票などの直接民主制には否定的なのですが、大阪市民(または大阪府民)が橋下氏の個々の施策について賛同しているのかは大変興味深いところです。

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