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.com ドメインの登録数が1億個を超えた

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registrarstats.com によれば、.com ドメインの登録数は100,364,457個となり、1億個の大台を超えました。

Comics18_lo■gTLD の登録数と推移

改めて言うまでもありませんが、ドメイン名の登録で .com は圧倒的な人気を誇っており、以下の表に記載された残りの gTLD (generic Top Level Domain)はすべてを合わせても 38,357,506個と、.com の半分にもなりません(※)。

TLD登録数
.com 100,364,457
.net 14,477,355
.org 9,799,299
.info 8,169,366
.biz 2,191,792
.us 1,711,634
.mobi 1,024,096
.tel 297,596
.name 209,453
.asia 197,759
.pro 116,115
.xxx 112,942
.travel 23,659
.aero 17,166
.coop 9,274
合計 138,721,963

※.us はアメリカの ccTLD(country code TLD)です。sTLD(sponsored TLD)も含まれており、sTLD には上記以外にも .edu、.mil などがあります。

.com と他の TLD の登録数の推移は以下の通りです(いずれも registrarstats 調べ)。

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■ドットコム[ドメイン名]バブル

上記のグラフは2002年頃から始まっていますが、その少し前の1999年から2000年にかけてドメイン名にもバブル期がありました。「ドットコム・バブル」と言うと、通常はインターネット関連企業への投資が盛んに行われた時期を指しますが、それにともなってドメイン名の登録も急速に増加していきました。

ドメイン名に注目が集まったのは、750万ドルで取引された business.com のような高額取引があったためです(1999年)。business.com は高額取引の典型的な例としてよく取り上げられますが、Wine.com(290万ドル)や Autos.com(220万ドル)などに加えて、AsSeenOnTV.com というフレーズが510万ドルで取引されたことが大きく影響したように思います。「ワンワード.com」は誰かに登録しているため、新規に登録することは難しいのですが、言葉の組み合わせは色々考えられるためです。

もう一つの要因が、安価なレジストラ(ドメイン登録業者)が登場したことです。それまで Network Solutions や Register といった老舗の業者では登録/維持のために年間35ドルがかかりましたが、bulkregister のようにまとまった数のドメイン名を登録することで登録単価を年間10ドル程度まで引き下げる業者が出始めたのです。「安く登録して、高く買ってもらう」という夢を見た人々がこぞって大量のドメインを登録するようになりました。

しかし、モノを売るときに「顧客を想定しない」というのは大変リスクの高いものです。「今、自分が苦も無く登録できたようなドメイン」を他の人が欲しがるということは通常ありません。顧客のアテもなく投機されたドメインは更新されることもなく捨てられていきました(もっとも、そうした中に、ときとして価値あるものがあったのも事実です)。

■増えた gTLD

ドメイン名のバブル期には、「このまま登録数がどんどん増えて、まともなドメイン名を登録する余地がなくなる」といったことが話題になりました。実際には、2000年頃に3000万個手前まで登録数が増えた .com ドメイン名が2002年半ばには2000万近くまで減りつつある状況でしたが、「良い名前で登録できないのは、TLD が足りないから」という議論がありました。

そこで、(一般に登録が認められていた)既存の TLD(.com、.net、.org)に加えて、新たな TLD を追加しようという動きがありました。元々 .com は commercial(商用)、.net は network、.org は organization という意味を持つ TLD ですが、2001年には .info(information)、.biz(business)、.name(name、個人用)が追加されました。.name は風変りなドメインでセカンドレベルとサードレベルを組み合わせて michael.jackson.name のように使うことが規定されていました(あまり使われなかったため、その後セカンドレベルのみでの登録が認められました)。

しかし、上記のグラフを見るとわかるとおり、これらはほとんど利用されませんでした。.info のみが突出して登録数を伸ばしているように見えますが、これは登録費を無料にするというキャンペーン(2004年)をはじめ、その後も格安での登録を誘導しているためです。大苦戦した .name のように、TLD を増やすビジネスは決して楽なものではなかったのですが、その後も TLD は増え続けました。しかし、そうした苦労がわかっているので、その後追加されたものは sTLD(sponsored TLD)ばかりです。最近では、ポルノサイト向けの .xxx が追加されています。

■新gTLD

グローバル(※)なトップレベルドメインを追加する余地がなくなってきたためか、最近ではgTLDそのものを自由化して、企業名や地域名を TLD として使ってもらおうという動きがあります。たとえば、CANON は .canon を使おうとしていますし、東京都は .tokyo を使う予定です。京都も .kyoto を使おうとしているようで、実は今日(2/10)が管理運営事業者の申請締切日です。
※gTLDのgはgenericを意味します。

しかし、これらにかかる費用は決して安くありません。「新gTLDの基礎知識――社名もトップレベルドメインにできるようになる?」(Web担当者フォーラム)で詳しく説明されていますが、申請費用として18.5万ドル、年間の管理費が2.5万ドルが必要です。これらは ICANN へ支払う費用であり、別途運営にかかる費用が必要です。せっかく gTLD をはじめても、何十、何百しか登録されなければ(実際に利用されなければ)、運営費ばかりが無駄にかさむことになります。しかも、始めてしまうと、なかなかやめられなくなります

■TLD は足りないのか

本当に、TLD を増やす必要があるのでしょうか。.com の登録数が3000万弱程度で「TLDが足りない」と議論していた頃とは違い、1億を超えた現在ですら .com 以外の TLD を利用しようという動きは大きくありません。「バブル期に高値で掴んだ」と言われていた business.com は、その後(他のドメインとともに)会社ごと3億4500万ドルで売却されました。TLD が増えてもニーズが分散することはなく、「.com への信頼」が高まるばかりです。

かつては「なぜ日本人は ccTLD が好きなのか?」と聞かれるくらい、レガシーなTLD(.com/.net/.org)以外は注目されませんでした。最近では URL 短縮サービスのおかげで、海外でも ccTLD が注目されるようになりましたが、需要が限定的であることに違いはありません。新gTLDが乱立することは、セキュリティ面でもクッキーモンスター(「「欠陥ドメイン名」が世界的に増えそうな件について」)という問題を抱えるおそれがあります。

ドメイン名が高値で取引されていると言っても、すべてがそんなに高額で取引されているわけではありません。新gTLDを運営するよりも良質のドメイン名に投資する方が、マーケティング的に望ましいのではないかと思えてなりません。

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