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IT業界のコメントマニアが始めるブログ。いつまで続くのか?

GW 前には、いよいよ異議申し立てをしなくては、と思っていたところ、思わず期限が延長されたと聞き、すっかり通常の休暇モードになっていた今日この頃です。2ヶ月前には、あまり話を聞いてくれる人もいなかったのですが、最近急に話題になっているようで、本日も、ある会合に出席してみました。

とりあえず、これまでの取りまとめをしておこうと思います。

  • この和解が意図するもの
  • 和解内容を決めたのは誰か
  • 和解に反対するために除外(オプトアウト)すべきか
  • 書籍を除外(exclude)すれば和解に反対する意思表示になるか
  • 米国で流通していないからといって絶版(Out-of-Print)扱いになるのはおかしい
  • 米国のルールを日本を含む海外にまで押しつけるのは不当か
  • 独占禁止法について訴えが起きていることは和解案撤回の後押しになるか
  • 出版社は「権利がないので、著者の判断にまかせる」という姿勢でよいか
  • 和解が成立したら出版ビジネスに悪影響があるか

・この和解が意図するもの
これまでに書いてきたとおり、その仕組みについては懸念はありますが、前エントリに書いたとおり、今回の和解がオプトアウトという仕組みをとっているのは、通常では入手できない「孤児作品」へのアクセスを提供することです。決して、著者の知らぬ間に作品を商用利用してしまおうとか、物書きは皆にアクセスしてもらうことを喜ぶべきなのだとか、既得権を破壊してしまおうと言っているのではありません。現状の仕組みでは、そう見られても仕方がない面はあるのですが、そのことを目的に設計されているわけではないので、「こんな破壊的なことを目論むとはけしからん」といっても、「それは誤解」と言われるだけでしょう。

・和解内容を決めたのは誰か
そもそも“和解”なのですから、グーグルが独自に決めたというものではありません。ブック検索の和解は、グーグルと米国の著作者団体などが決めたもので、グーグルは和解管理のための資金は提供していますが、その説明責任は和解管理者にあります。和解サイトを見れば、電子メールや電話での問い合わせ先が書いてあり、私は実際に問い合わせをして、回答を受け取っています(日本語でのコミュニケーションには、やや難ありだった、と申し添えておきますが)。

すでに書いたとおり、和解サイトの日本語はわかりにくく、深刻な誤訳があり、指摘しても修正されないという問題はあるのですが、「説明がわかりにくい」「どうなるかわからない」というのであれば、この問い合わせ先を通じて、和解管理者に連絡してみるべきでしょう。また、それなりの団体であれば、彼らに通訳付きで来てもらうこともできるようです。実際、今月末には2つの団体と話をしに来日する予定があるそうですし、いまも各国に説明に出向いているようです。

・和解に反対するために除外(オプトアウト)すべきか
いくつかの団体や出版社が、和解への反対を表明するためにオプトアウトを選択しているようです。(和解管理者の説明によれば、ではありますが)オプトアウトは、自らが和解集団から抜けることを意味するだけで、和解の成立に反対することにはなりません。オプトアウトすることは和解の当事者でなくなるので、個別に訴訟できるというだけです。和解(案)そのものに反対するのであれば、オプトアウトせずに異議申し立てを提出する方がよいと思います。

和解集団から離脱して独自に交渉することを選択する組織もあるようですが、何を交渉するつもりなのか疑問です(といいますか、実は直接伺ったのですが…)。離脱した著者たちの作品を勝手に使うな、ということであれば、和解に残留してもできることだからです。この和解において作品リスト(版権レジストリ)の不備について、グーグルが免責されていますから、その点に懸念があるという話も聞きましたが、これは和解から離脱したからといって「責任を負え」というような交渉は難しいと思います。仕組みに不安があるということであれば、やはり和解集団に残留して異議申し立てをする方がよいと思います。もっとも異議申し立ては(和解管理者ではなく)ニューヨーク地方裁判所宛に提出しないといけないので、英文で書かないといけないでしょう。

なお、出版社が書籍リストを提示した上でオプトアウトを選択すると、その書籍の表示使用(fair useにあたらない書籍全体へのアクセス)は行われないようです(ただし、疑問の残る部分があるので、さらに確認中です)。

※余談ですが、和解集団からの除外はオプトアウト(Opt-Out)、和解管理サイトで書籍情報を除外することはExcludeとなっていますので、ご注意ください。

・書籍を除外(exclude)すれば和解に反対する意思表示になるか
一部には、書籍の表示使用を許諾する比率が低いことを嘆く向きがあるようです。しかし、前述の通り、版権レジストリは「流通せずに埋もれてしまった作品」を活用することにあるのですから、日本で流通しているもの、あるいは著者の判断で、書籍を表示使用しないように除外(exclude)したり、除去(remove)してしまうことは、和解の意向に背くものでもなんでもありません。むしろ版権レジストリは「著者の意向」を正確に反映することを意図しているものなので、こうした著者の意向が反映されることは好ましいことです。したがって、すべての書籍を除外したからといって和解に反対することにはならないですし、ましてや嘆くようなことでもありません。

その意味では、和解内容に不満を持っている人(少なくとも著者)にとって、和解は深刻な問題にはならないと私は思います。和解サイトで、書籍情報を調べ、すべての表示使用を禁止すればよいからです。問題は、和解内容を知らない人、あるいは気にしていない人の作品が、当人の知らぬ間に利用されることです。

・米国で流通していないからといって絶版(Out-of-Print)扱いになるのはおかしい
最初のエントリで示した懸念ですが、すでに書いたとおり、日本で流通しているもの、たとえば amazon.jp を通じて米国に輸入できるものも、「市販中(Commercial Available)」とみなすのだそうです。現状では「間違ったデータがある」のであって、これらを正しい情報に修正するためには、適宜連絡をしてほしいということでした(いや、そんなことを言われても、ということではありますが)。

また、この和解は米国でのものなので、米国内からしかアクセスできないと説明されていますが、すでに Google のサイトで表明されているとおり、Google は、この和解内容を全世界に広げる計画があります。また、版権レジストリも米国内の使用だけを想定したものではなく、各国で同じプロジェクトを進めるときにも使われる予定だそうです。つまり、この意味でも、各国で販売中のものは「市販中」としていなければおかしいわけです。

・米国のルールを日本を含む海外にまで押しつけるのは不当か
これは前々回のエントリに書きましたが、著作権のルールは各国で決めることができるというのが基本です。先にレンタルCDの例を挙げましたが、それぞれの国で、他国では受け入れられていない利用法はあります。もっとも米国のルールに文句を言うのは内政干渉という人もいるようですが、米国が年次改革要望書でダウンロード違法化を要求してきているように、文句を言うこと自体は、たとえ和解が成立した後であっても問題ないでしょう。(ただし、和解が成立した後に、これを撤回させるのは困難だと思いますが)

・独占禁止法について訴えが起きていることは和解案撤回の後押しになるか
本来、和解は非独占的なものであるはずなのですが、免責条項に具体的に記載されているのがグーグル社だけだということが問題視されているようです。しかし、こうした訴えは他社の参入が阻害されることを懸念しているのであって、孤児作品を活用することを否定しているのではないでしょう(むしろ競争があれば、活性化しやすい)。したがって、この動向を、和解案に反対する後押しとは考えない方がよいと思います。

・出版社は「権利がないので、著者の判断にまかせる」という姿勢でよいか
私が言うのも差し出がましい話ではあるのですが、今回の和解に対してはとくに出版社には権利がないので、著者に判断を任せると表明する大手出版社があるようです。実際、小倉弁護士の解説によれば、通常著者と出版社の間で交わされる出版契約で拘束されるところの出版権と、インターネット配信は独立した権利となっているようですから、電子出版に関する契約を結んでいない場合には、いたしかたない面はあるのかもしれません。しかし、前述の通り、このプロジェクトは海外に展開することも考えられています。日本にやってきたときに、引き続き「著者の判断にまかせる」と言い続けるつもりなのかどうか、疑問に思っています。あるいは、そのときには「口をはさむ」つもりなのであれば、今から何らかの行動を起こす方がよいように思います。

ちなみに、解決策のひとつは、出版社に版面権を認めることなのでしょうが、これは副作用が大きいような気がしており、今回の対抗措置として導入するというようなことには私は賛成できません。インターネット配信についても、デフォルトで契約に盛り込んでおくのが現実的でしょうが、その場合は、電子書籍に取り組んでいない出版社で問題がおきそうです。amazon が Kindle とともに日本でも電子出版事業に取り組んでくれれば、かなり解決するのかもしれませんが。

・和解が成立したら出版ビジネスに悪影響があるか
個人的には、大半の書籍において、マイナスの影響はないように思います。あくまでネットを通じたアクセスまでですから、(それこそKindleのように)持ち運ぶことすら難しいものです。バッテリーを必要としない「印刷物」としての書籍の価値が損なわれることはないでしょう。昨今の不景気もあり、「印刷物」にとって厳しい時代が来ているとはいえ、「ネットでアクセスできるなら紙は不要」ということであれば、新聞業界はとっくに淘汰されているはずです。また、反対の意を唱えるにしても、「和解が成立したら出版業にマイナス」と言ってしまうと、実際にマイナスにならなければ「勝手な思い込みだった」と言われるでしょうから、よい論法には見えません。

高額な専門書については「買わずにすます」という人が増えて影響があるかもしれませんが、本当に悪影響があるなら、版権レジストリにアクセスして表示使用を禁止すればよいだけです。出版社の意向を無視して著者が許諾を与えるような場合は、両社の間での“調整”は必要でしょうが、それこそ、これはお互いの信頼関係の問題であり、和解の問題ということではないでしょう。

mohno

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大野 元久

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平成元年にIT業界に入って以来、開発ツールに関わり、主にマーケティング中心に活動してきました。現在はフリーランス。

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