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レコード会社とアーティストは対立しているのか

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まず、NHK については、法律でテレビ所有者に受信料が義務付けられています。たしかに税金ではなく、罰則規定もないのですが、番組を見るために払う(見ないなら払わない)という選択肢は用意されていません。これは、税金のような性格を持っているといってよいと思います。実際、私が受信料を払っている目的は「法律を守るため」だといって過言ではありません。NHK には是非選択権を与えて欲しいものだと思います。なお、公立美術館が入場料を取るように、受益者負担として DVD などを有償販売することは、受信料を抑えるという意味でも不自然なことではないでしょう。

さて、主題と思われる「クリエイターが商業主義に走っているのではなく、クリエイターを取巻く業界が商業主義に走っているのではないか」という点について考えてみます。音楽を例にとるため、今回のタイトルはレコード会社とアーティストとしましたが、はたしてレコード会社とアーティストは対立する存在なのでしょうか。

さすがに、私も「対立なんかしていない」とまでは言いません。以前にも取り上げましたが、ymo.org に見られる「YMO 商法」に対する YMO メンバーの不快感、マイケル・ジャクソン対ソニー、プリンス対ワーナーといった確執が報道されたりもしましたし、レコード会社の行き過ぎた商業主義に不信を感じて「もう、俺の CD はコピーして聴いてくれ」と言い放ったアーティストもいたと思います(記憶は不確かですが)。

だからといって、レコード会社とアーティストが常に対立関係にあるのだとか、レコード会社はアーティストから搾取しているとは思いません。いつでもそうだというなら、あるいはアーティストがそう信じているなら、そもそもレコード会社と契約しようとなんかしませんよね。レコード会社と契約するということは、自分の楽曲をレコード会社に使わせる代わりに報酬を得ること、つまり許諾権から報酬請求権への切換えをアーティストが選択することだといえます。そして、レコード会社は営利を目的にしているわけですから、誤解を恐れずに言えば商業主義に走るのは当然のことです。

契約に「商業主義に走らないこと」という項目を入れるアーティストがいるのかどうかわかりませんが、あまり考えられないことです。むしろ、自分の楽曲が広まって商業的にも成功するのであれば、アーティストは嬉しいのではないでしょうか。もちろん、「JASRAC に縛られない権利」にも書いたように、アーティストには商業主義に走らないためレコード会社に属さないという権利があります。もし、契約が守られずにレコード会社が不当な搾取をしているというのであれば、それこそ契約違反で訴えるべきものでしょう。あるいは、初音ミク騒動に見られるように、アーティストがよくわからないまま契約することになってしまったというのは、実に残念なことです。

なお、音楽ではないですが、書籍の場合、出版社を通して販売する書籍について執筆者が受け取る印税は通常販売価格の10%程度です。残りの90%は出版社や小売店などのマージンとして取られるわけです。しかし、自費出版して自分で販売するなら、印刷費用を除いたすべての利益を自分で受け取れます。でも、そうやって売れる数というのは、出版社を通じて売れる数よりもかなり限られるでしょう。

同じように、アーティストが自分の Web サイトを構築して楽曲を売ることもできます。インターネットを使えば、代金の受け取りだってできます。CD も安く制作できるようになり、路上で売っているケースもよく見かけます。これなら利益はすべて自分のものです。でも、生活できるほど売るのは大変なことでしょう。レコード会社に属して、販促や製造といった手間を他人にまかせ、創作活動に専念できるという意味では、レコード会社とアーティストは十分に協力関係にあると言えるのではないでしょうか。

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