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1年経ったニコニコ動画

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wikipedia によればニコニコ動画の実験サービスが開始されてから1年が経ったようです。ちょうどその頃、Winny 事件の判決があり、「もしYouTubeが日本にあったら、今頃とっくに、東京地検特捜部が「犯罪のほう助」容疑で、会社から段ボール箱を運び出しているんだろうなあ」とおっしゃるアルファブロガーの方もいらっしゃいましたが、YouTube のような広告モデルによる無料サービスどころか、(コンテンツに対価を払わないまま)有料サービスさえ導入しているにも関わらず、何の咎めも受けていません。

その Winny 事件の影響について、当時「Winny 開発者有罪の判決は開発者の活動を停滞させるか?」というエントリを書きましたが、1年たった今、実際に活動が停滞した例ってどれくらいあるんでしょう。上記のニコニコ動画も運営が続いていますし、YouTube も正式に日本に進出してきました。初音ミクなんて新しいソフトが出てきたりしています。MYUTA のように当たって砕けたという例はありますが、米国でもネット録画サービスが違法判決を受けたことを思うと、とりたてて日本だけが厳しいとはいえないでしょう。

実のところ、訴訟リスクにさらされる危険性は海外の方が高そうです。たとえば、日本では、せいぜい権利者団体との話し合いが行われている程度の YouTube は、海外では何件も訴訟を起こされています。ちなみに、Viacom の言う「YouTubeについて、契約書にでもサインしない限り、著作物の保護をしてくれない」が認められたら事情は変わってくるかもしれませんが、今のところ私の考えは以前とさほど変わっていません。

Winny 事件の判決そのものについては、「作者に著作権侵害の意図があるから有罪になったという話はすべて誤り」という主張はあるようですが、判決文を読むと「技術それ自体は価値中立的であること,さらに,価値中立的な技術を提供すること一般が犯罪行為となりかねないような,無限定な幇助犯の成立範囲の拡大も妥当でない」と書かれているくらいで、技術は罪に問われていません。また、自分の実名サイトとは別の場所で匿名で公開したことが犯意の理由に挙げられているなど、著作権侵害という犯罪を容認したことが有罪という判決に結びついたとしか思えません。

ふりかえってニコニコ動画を考えてみると、たまたま「ニコニコ動画を見る事が違法になりそうです」というものを見つけたのですが、これって「違法コンテンツのダウンロード違法化が成立する」と「ニコニコ動画を見ることが違法になる」ということを意味しているのですよね?(ID持っていないので内容は未見) ということは、「ニコニコ動画は違法コンテンツを前提にしたサービス」を肯定していることになって、なんだか危ない感じがします。規約を読んだら違法な投稿は禁止されていますから(まあ、当たり前)、ユーザーの先走りなのかもしれませんが、西村氏自身は、投稿の多いアニメについて「プロモーションになるから権利者は黙認しているかもしれない」と語ったりしています。これが、YouTube の担当者だったら著作権侵害を肯定するようなことは言わないのではないでしょうか。

ニコニコ動画(動画+コメント)という新しいサービスを否定しませんし、技術が罪に問われる心配はないと思いますが、関係者は言葉(あるいは行動)を選ばないと、それこそ段ボールを運び出されることになるんじゃないかと他人事ながら気になりました。まあ、権利者団体との提携話も進んでいるようですから、そういう可能性はまずないのでしょうけれどね。

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