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パブリックコメント「私的録音録画小委員会中間整理に関する意見」

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いまさらですが、「私的録音録画小委員会中間整理に関する意見」として以下のコメントを送信しました。

・104ページ~、「i 第30条の適用範囲からの除外」
意見:早急な導入には反対する。さらに検討を進めるべき。
理由:まず、注釈51には、「ストリーミング配信サービス(投稿動画視聴サービス)について、一般にダウンロードを伴わないので検討の対象外である」と書かれているが、受信技術としてのストリーミングとダウンロードの違いはほとんどないため、ここで使われている「ダウンロード」という言葉は、「受信」した上で「(再利用可能な)ファイルとして保存」することを指していると推定される。たとえば、ストリーミングで受信したデータをファイルに保存することも技術的に可能である。通常は、受信のみを指して「ダウンロード」と呼ぶことも多いため、この注釈は誤解を誘導しかねない。
また、受信したデータは、再利用しない場合でも、何らかの形でメモリまたはハードディスクなどの記憶装置に「保存」されることになるため、再利用を目的としない一時的な蓄積が複製に当たらないとする明確な規定についても検討すべきである。
また、ダウンロード違法化の実効性にも疑問の余地がある。アップロード側については、1件の行為でも非常に大きな影響をまねくおそれはあるが、105ページに記載されているとおり、ダウンロード側については1件の行為における被害は非常に軽微である。このため、法改正を行っても、刑事・民事ともに実質的な抑制効果を持たせることが難しいと考えられる。被害が甚大になりうるアップロード側での対策を進めるべきとも考えられる。
したがって、ダウンロード違法化については、将来的な導入まで反対するものではないが、現時点では、さらなる検討が必要である。

追加意見:第30条1項1号(公衆用自動複製機器)の見直し
理由:ダウンロード違法化の論拠としては、アップロードとダウンロードの組み合わせにより、私的でない複製が行われることにあるとも考えられる。その場合、アップロード側の違法性については、その著作物が公衆に使用されるためであると考えるのが自然であるが、本来、「公衆」とは不特定多数を想定すべきである。「まねきTV事件」と「録画ネット事件」の判決の違いは、複製が顧客が所有する製品によって行われるか、顧客が申し込んだサービスによって行われるかによってもたらされたが、得られる結果に変わりがないにもかかわらず、技術的な実装の違いによって適法性が異なることは望ましいとは言えない。
この問題を解決するためには、著作権法第30条が示す「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」を目的にする場合においては、アップロード側について送信可能化権侵害の例外とすることが考えられる。この場合、第30条1項1号の公衆用自動複製機器に関する除外規定も削除する必要がある。この除外規定が想定するレンタル品からの複製の可否については、これとは別に検討すべきである(別途、以下に意見)。

・108ページ~、「a レンタル店から借りた音楽CDからの私的録音、適法放送のうち有料放送からの私的録画」
意見:CD における CCCD、DVD における CSS を著作権法第30条1項2号における技術的保護手段とみなすことを検討する。または、アクセスコントロールを使用目的をアクセスのみに限定し、これを利用した私的複製の制限を検討する。
理由:実質的に CD や DVD の複製を防止する技術として導入されている、これらの技術はアクセスコントロールであり技術的保護手段とみなされないというのが、一般的な見解のようである。すでに検討された実績はあるようだが、これらを技術的保護手段とみなすことで、著作権者が期待する複製の可否を法的に制限できるようになる。
たとえば、上記の追加意見における自動複製機器の除外規定を削除する場合には、必要な対応である。そうしない場合、アクセスコントロールを回避できる複製装置によって、レンタル店での著作物複製が横行しかねない。
ただし、著作権法原始附則5条の2(自動複製機器についての経過措置)によって、図書館やコンビニエンスストアでのコピー機による文書や図画の複製が認められていることと同程度の複製については、著作権者への影響は軽微であり、例外として認めるべきである。日本の著作権法では、米国のフェアユースのような抽象的な規定を持たないため、第10条に例示されている著作物の種類、放送やCDといった著作物の形態の違いによって私的複製の範囲を個別に指定することも検討されたい。

追加意見:レンタルCDについては、著作権法第95条の3(商業用レコードの貸与)の廃止を含めた検討を望む。
理由:邦楽を中心に、すでに第2項の規定上限をはるかに下回る期間でのレンタルが開始されている。このため、貸与権を設定することがなくとも、レコード製作者と貸しレコード業者間との許諾契約によって、ビデオ/DVD レンタルと同様、レンタルCDは維持可能であると推定される。レンタルCDの運営を許諾契約に基づかせることで、商用CDにおいては複製防止技術を適用せず、レンタルCDには適用する、といった差別化を導入できるようになる。レンタルビデオ/DVDにおいては、市販版とレンタル版で内容が違うことは一般的である。レンタルCDは、日本独自のシステムであり、この制度を望まない著作権者(特に海外のレコード製作者)がレンタルを抑止することも可能になる。

・113ページ~、「2 著作権保護技術と権利者が被る経済的不利益の関係」
意見:著作権保護技術と補償金は独立して検討すべきである。また、補償金の廃止を求める。
理由:著作権法第30条の認める私的複製は、その複製における著作権者への影響がないか、極めて小さいために認められているとされている。したがって、技術的保護手段の有無にかかわらず、この複製の範囲においては、補償金を必要とするほどの経済的不利益は存在しないと考えるべきである。
また、録音補償金、録画補償金ともに、それぞれの対象となる分野のビジネス規模(数千億~数兆円)に比べて、補償金の額が極めて小さく(十数億円)、権利者が十分な補償を受けていると認定できるほどの規模にはなりえない。一方で、録音録画補償金とも、有料の著作物でない個人的な目的での録音録画にとどまる場合でも、その対価が課せられることになり、これを個別に回復することはコスト的に見合わないという問題点もある。記録メディアの違い(CD、DVDとハードディスク/フラッシュメモリ、など)によって補償金の有無に違いがある点も問題といえる。
前述のとおり、著作権者への補償金分配は限られており、このような不整合を甘受してまで維持すべき仕組みではない。

※補足。
パブリックコメント募集案内において、賛否の数を問うものではない、とされているにもかかわらず、賛否の数が判断材料とされているという意見がみかけられた。このような風評を避けるために、「意見が大勢であった」のような表記には「委員会において」など、対象を明確にすることが望まれる。

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