Winny によるダウンロードはアップロード
別の話を書こうと思っていたのですが、いつも技術的に鋭い視点を持たれている高木浩光さんの最新の日記に見逃しがたい話がありましたので、ご紹介します。実のところ、技術的な認識はあったものの、以前、栗原さんのエントリのコメントで議論しているときには、あまり考慮していなかったことでした。つまり「Winny によるダウンロードは、アップロードである」ということです。Winny ではいわゆる「ダウンロード得」をふせぐため、自動的にダウンロードに見合う”貢献”するような仕組みが導入されています。つまり、自分がダウンロードしたファイルは、自動的に他者がダウンロードするような状態に置く(送信可能化する)仕組みになっています。
もともと、栗原さんのエントリは Winny に限定した話ではありませんでしたが、ここでは「アップロード(送信可能化行為)は違法」「ダウンロードは私的複製であり合法」というのが一般的な理解という話でした。そして、高木氏の日記からリンクされている経済産業省の説明の143ページを見ると、
なお、例えば、ユーザーがダウンロードしたファイルをそのまま自己のパソコンの公衆送信用記録領域に記録し、インターネット上で送信可能な状態にした(ダウンロード行為が同時にアップロード行為に相当する)場合は、当該ダウンロード行為は私的複製には相当しないため複製権侵害に該当すると解される。
と、まさに Winny の仕組みに沿った説明がなされています。Winny の仕組みを知らない人は、故意とは認定されない(賠償責任は負っても刑事罰にはならない)かもしれませんが、「Winny の技術はすばらしい」と言っている人は、この仕組みを理解していると考えられるでしょう。著作者が報酬を受け取らない形で送信可能化することは、日本や米国が批准している WIPO Performances and Phonograms Treaty(実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約)で禁止されていますから、この批准をやめない限り合法とみなされることはありません。ちなみに、Winny 開発者の金子氏は自分ではダウンロード専用を作っていたという報道もありましたから、金子氏だけは本当に合法にダウンロードできていたわけです :-O
すでに、さまざまなメディアを通じて広まっていると思いますが、今あらためて、ダウンロード=アップロードであるという『Winny の技術』を広く知らしめましょう。これは技術に罪はないとか金子氏に著作権侵害の意図があったかということとは別の話です。ましてやウィルスによる情報流出は、著作権侵害とは別次元の話です(いまだに Winny 使ってる警察官がいるのかよ、という話はありますが)。