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なぜマイクロマネジメントは効果がないだけでなく害なのか?あるいは新米管理者が陥りがちな罠

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部下のやることにどれだけ口をだすか?というのは、結構悩むポイントだ。
口を出しすぎな管理スタイルを「マイクロマネジメント」と呼ぶ。


例えば、部下が社外に出すメールの文言を逐一チェックしたがる人がいる。
全てチェックし、自分の気の済むように直させる。メールごときでそうなのだから、もちろん作成するその他の資料は全部目を通し、直させる。

問題は、何を直させるか?という基準だ
・組織として誤った内容を書いてしまっている
・日本語が明らかに間違い
・間違いではないが、極めて分かりづらい
ならば、直すべきだ。
ただ、「この言い回しがオレの趣味じゃない」というレベルまで直させる人もいる。

僕が若手の頃に言われた一番しょうもない指導は、「お客さんとの会議資料のホッチキスが真っ直ぐじゃないのでやり直せ」という話。
ここまでくると、明らかにパラノイアである。


仕事の成果(メール文言も、仕事の成果物と言えなくもない)をチェックするのではなく、行動に介入するタイプの管理者も多い。

例えば、作業計画を1時間単位で作って、事前事後にチェックさせろ、という人がいる。
「人の話を聞く時に、パソコンでパチパチメモを取るな!」と指導する人もいる。
「人の話を聞く時は、必ずメモを取りながら聞くのが礼儀だ」と指導されたこともある。



賛否あろうが、ここまで行くとマイクロマネジメント過ぎて、弊害が大きいと僕は思う。
僕自身は、人の話を聞く際にパソコンでメモは取らない。ノートにもほとんどメモを取らず、その人の話を聞くことに集中する(その結果、話の記憶力はいい)。
タイピングはかなり速い方だし、ほとんど意識せずにできるが、それでも、集中力は持って行かれる。相手の言っていることをきちんと受け止め、自分なりのアイディアを作り出す作業のジャマにはなる。

しかし、自分の部下に「絶対にメモを取りながら話を聞くな」と強制はしない。「あまり良くないと思うけど?」くらいは言う時もあるかな?あと、部下がド新人ならば、「まずは型を学べ」くらいのトーンで従わせることもある。
助言を受けてどうするかは、結局、その人次第だ。そして、そんなことまで介入するマイクロマネジメントの弊害のほうが大きいと思う。


なぜ多くの管理者がマイクロマネジメントに走るのだろうか?

部下を信頼していないので、マイクロマネジメントしないと、マズイことが起きると思っているからでしょうね。お客様に失礼なメールを送ってしまうとか。部下の仕事の効率が下がるとか。

あとは単純に、「自分の責任範囲内の仕事は、隅々まで自分の思う通りにしておきたい(しておくべきだ)」と思っている、という人が多い。
さっき書いたホッチキスの例がその典型で、「ホッチキスの角度が、お客さんにとって重要か?」は、その人にとってはどうでもよくて、自分にとってあるべき姿にするのが重要。自分の部下はそれに従うのが当然、と思っている。



では、なぜマイクロマネジメントが害なのか?

▲仕事した気になる
まず、マイクロマネジメントをする本人にとっての害。それは、「本質的な仕事をしていないのに、仕事をした気になってしまう」ということだ。
メールの文言とか、ホッチキスの角度を正すなんて、ほとんど価値がない。それでもそれをやっていると、管理者として仕事をした気になる。チームや組織のリーダーにとって、1000倍重要な仕事、たくさんあるよ・・。


▲部下のやる気がなくなる
普通の人間は、裁量権が狭められると、やる気を失う。
これ、なんででしょうね?
「こんなことすら、自分の裁量でやるのを許されないのか」と自尊心が傷つけられるからかもしれない。
単純に、ウザいからかもしれない(直すのは面倒だし)。
1回や2回ならいいのだが、繰り返されるとかなり来る。


▲部下が思考停止する
これ、ちょっと分かりにくいかもしれないけど、他の全ての害を合わせたよりも、これが最悪。これ一つで一発アウト。どういうことか説明する。

マイクロマネジメントで指導するような仕事の細部というのは、仕事の方針や原理原則ではないので、部下からは推測できない。例えば「上司が、会議の席順にはこだわらないけれども、資料のホッチキスにはこだわる人である」なんて、事前に分かる訳がない。
なので、そういう上司とスムーズに手戻りなく仕事するためには「全てのことについて、事前に確認しなければならない」という原則が成り立ってしまう。

「資料はカバンに入れるべきですか?紙袋でもOKですか?」
「パワーポイントのこのページはMSゴシックがいいですか?Meiryo UIですか?」
「お客さんの課長にもメールのCC入れたほうが良いですか?」
自分で判断すると、後から何を言われるか分からないから、全て確認するのが最適な方法になる。だから自分の判断は停止し、全て確認する。要領の良いひとほど、自らそうする。
そうやって誕生するのは頼れる部下ではなく、ただのプログラムである(プログラミングされたとおりに実行する人)。恐ろしいことだ。

僕はこうなりたくなかったから、マイクロマネジメントな人の指導は基本的に無視していた(方針や原理原則に関することだけ、選択的に受け入れていた)。そうすると、当然仕事はうまくいかないし、そういう人からの評価はすごく低かった。
別にそんなヤツにどう思われようと、どうでもいい。ものを考える習慣を失うことに比べれば。


余談だが、そもそも僕は「仕事の神は細部に宿る」をあまり信じない。
「大事な仕事には踏み込め。とことん考え尽くし、こだわれ」とは思うけど、今日ここで取り上げているようなことには、神は宿らない。むしろ下らないことにこだわる人が、仕事の本筋から目をそらしているのを何度も見てきた。
もう価値観が違いすぎるんだよね。


▲部下が自発的に行動しなくなる
例えば、仕事で作った資料が他の人にも役に立ちそう。共有しようかな?と思った時。
その時に頭によぎるのは「あー、でも、これを公開したら、あの人からこんなこと、あんなこと突っ込まれるな・・」という予想だ。そうすると、萎えるよね。別にわざわざ公開しなくたって、自分の仕事は果たしているのだから。そうして、貴重なナレッジがひっそりとしまわれる。

管理者はしばしば「ナレッジはみんなで共有しよう!」みたいな掛け声をかけていたりする。でも、当人がマイクロマネジメントをしていたら、部下たちはとっくに萎えている。「最近の若い奴らは自発的に仕事をしない」みたいな愚痴を焼き鳥屋で言っても遅い。

ナレッジの共有を例にしたが、自発的な行動を全て抑制する効果がありますよ、マイクロマネジメントには。



ということで、マイクロマネジメントはメリットの割に、害が大きい。
そもそも、お客さんにちょっとくらい失礼な文言のメールを出しちゃったとしても、たいていは相手は気にしていないし、もしそれがトラブルに繋がったとしても、管理者がフォローすればいいだけのことだ。
ほとんどの人は、下っ端の仕事の品質よりも、責任者の組織としての対応の方を重視する。

だから、マイクロマネジメントはしてはいけないのだ。
口を出したくなっても、我慢しなければならないのだ。
その結果、ちょっとくらいマズイことが起きても、黙々と対処しなければならないのだ。
管理者なんて、そのためにいるのだから。


ここまで書いて思ったんだけど、僕の知っているマイクロマネジメントする人って、自分がマイクロマネジメントだとは考えていないんだよね(ホッチキスの人も含め)。
本人は自分のことを単に指導熱心な優れた管理者だと思っている。

なので、いま、現にマイクロマネジメントをしてしまっている人ではなく、未来の管理者がこの記事を読んで、考えてくれたら嬉しい。

**********************2017/5/19追記

この記事を読んで、
「マイクロマネジメントされて無視したら、更にひどくなったから逃げた」
というコメントをいただきました。

そうなんですよね~。ひどくなります。
マイクロマネージャーの言い分としては、
「あいつはダメだから、こんなこと(レベル3)すら逐一指導が必要」
「言っても言ってもレベル3ができない。仕方ないからレベル2から指導しないと」
「言っても言ってもレベル2ができない。なんだあいつは!」
みたいな感じで、益々マイクロになります。

僕も逃げるしかないと思いますね。
上司を選べる環境ならば良いんですが。

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