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仕事に必要なメンタルとは耐える力ではない。あるいは卓球と映画「オデッセイ」

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我が家では卓球が人気スポーツで、先日の世界大会も何試合かTV観戦した。そんな中、Twitterでこんな話が流れていた。

「卓球で勝つには何が一番大切?」と尋ねると、日本人はたいてい「気持ち」「メンタル」と言う。多分そう教えられているのだろう。
しかし、中国人は「頭」だと言う。


これには考えさせられた。
「頭」というのは、相手の出方とか、自分の技の通用度合いを見極めながら、作戦を考える思考力のことだろう。


試合はスピーディに展開していくが、状況はかなり変化していく。
どのサーブを選択するか?
フォアとバック、どちらを狙うか?
粘るか速攻か?
ずっと作戦を考え続け、変更し続けなければならない。身体的テクニックはもちろんだが、かなり頭も使うスポーツなんだと思う。



そんなことを考えているうちに思い至ったのだが、「気持ちの強さ」とか「メンタルタフネス」の実態は、実は「考え続ける力」ではないだろうか?

「メンタルを強く持つぜ!」といくら思っても、実は何をやればいいか分からない。
仲間と円陣組んで声を出せば、緊張はほぐれるかもしれないが、そんなんじゃ全然たりない。勝てない。
「気合入れるぜ!」と体をこわばらせたら、もっと勝てない。
そもそもメンタルの強さを「つらい状況を我慢できること」だと勘違いしている傾向すらある。
そうではなく、ずっと考え続けるタフさこそが、メンタルの強さの実態だ。


皆さんは経験があるだろうか?追い込まれたり、緊張したり、疲れた時、真っ先にやられるのは、実は体ではなくて思考力だ。
僕は超耐久自転車競技をやっているので、よく知っているが、疲れ過ぎると、判断ミスも増えるし、なにより作戦を考えること自体を放棄するようになってしまう。


「卓球で勝つには何が一番大切?」という問いに「頭」と答える中国人は、この点について、深い理解があるように見える。どんな状況になっても考え続ける思考力こそが、逆転勝ちや際どい勝利を生む。

一方、「メンタルが大事」と答える日本人は、実は踏み込みが浅い。「気持ちの強さが大事」と思っても、何していいか分からないから。
結局行動に結びつかず、単なる精神論で終わってしまう。精神論にこだわり過ぎるのは、太平洋戦争の頃から変わらぬ日本人の悪癖だ。



さて、「プロジェクトマジック」というタイトルのこのブログで、長々スポーツのことを書いたのは、仕事、特にプロジェクトでも全くおなじだからだ。

プロジェクトがピンチの時に、ギャーギャーと犯人探しをしたり、怒鳴り散らしたり、過去に下した判断を嘆いたりせず、「その時点で最適な打ち手」を考え尽くすことができるか?

これがプロジェクトの成否を分ける。
しんどい状況で、きちんと考えることができる人こそが、リーダーだ。リーダーというのは「みんなを導く人」なのだから。


最近見た映画「オデッセイ」も全く同じことをテーマにした映画だ。
火星基地に一人で取り残されてしまう主人公。絶望的な状況だ。でも、泣いたり騒いだりしない。まず残された食料を数え、土壌を作り、ジャガイモを育て始める。ジャガイモが収穫できてからも、次々とトラブルは起こる。でも生き残るための思考を止めない。常に「その時点で最適な打ち手」を選ぶ。
タフだ。


プロジェクトは難しいから、時に破綻する。そういうプロジェクトを外から観察すると、「プロジェクトマネージャーを始めとして、メンバー全員が思考停止している」という顕著な特徴がある。

だれもが「このままだと失敗するのでは?」と、なんとなく感じている。
「絶対期限を守れない」
「そもそも、何のためにこのプロジェクトやるの?」
「貧乏くじ引いた。早く逃げ出したい」
とも思っている。


だがそういうプロジェクトでは、「現時点での最適な打ち手は何か?」を真剣に考え、主張することを誰もやっていない。
あまりに疲れすぎているのか、絶望しているからか、現状を打開する方法を考えるのを放棄し、目の前の仕事を黙々とこなすだけになっている。
ちょっと「生ける屍」っぽい。

破綻プロジェクトは、ある日突然崩壊するのではない。
こういう生ける屍が一人ずつ増えていき、どうにもならなくなる(ゾンビと同じで、思考停止は伝染する)。

生ける屍は死なずに仕事をし続けるので、「つらい状況を我慢できること」という観点からいうと、タフなのかもしれない。でもそれは、僕が思う「仕事に必要なタフさ」とは別で、どちらかと言うと、鈍感さだろう。


生ける屍化するのではなく、「その時点での最適な打ち手」を考え続けるメンバーが何人かでもいれば、どこかで立て直せる。
あなたがそういう1人だといいけれど。

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