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仕事で大切なことはみんな算数に教わった、あるいは難しい仕事への取り組み方

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よくあるビジネス書みたいなタイトルにしてみた。
普通は算数じゃなくて、Appleだのマクドナルドだのディズニーランドだのが入るけれども、僕はそういう有名ドコロに勤めたことはないので、もっと卑近な話を。


冬休みはずっと家にいたので、娘に算数を結構教えた。
3年前に「6×8は正解でも8×6はバッテン?あるいは算数のガラパゴス性」という記事で世間をお騒がせしたウチの娘も、もう5年生なので、問題も結構難しくなってきた。
(ちなみにこの記事は、コメント欄で論争が巻き起こり、コメント数1000を突破した。当オルタナブログ史上最大のコメント数だと思う。システム移行の際にざっくり捨てられてしまったようですが)

で、娘に算数を教えている時に僕が言っている事って、仕事で同僚に言っていることと殆ど同じだという事に気づいた。まあ、同じ人が話すことだから当たり前なんだけど。
書き出してみよう。


★まず、状況を図に表わせ

文章題に書いてある事をそのまま図に表現しろ、と口を酸っぱくして言っている。数直線でも◯でも□でもいいから。
仕事でも、現状を調査し、それを書き出すところから全てのプロジェクトをはじめなければならない。

ほとんどの問題は、「どういう問題か?」を正確に理解さえすれば、解き方はすぐに分かる

企業を変革する際も、
・何が問題か?
・問題と問題はどういう関係か?
・どういう構造でそれは起きているか?
がきちんと理解できれば、改革施策がスムーズに出てくることが多い。逆に言うと、きちんと問題の有り様を理解するのはかなり難しい。医療における診断と似ているかもしれない。

★ノートは考えた順に書いていけ。頭を整理するための道具なのだから

子供って放っておくと、あっちこっちの紙に書き散らかしますよね。僕が小学生の時はもっとずっとひどかったのを思い出した。
でもそうしていたら、いつまでたっても頭のなかはグチャグチャのままだ。

★図で状況を表せていないのに書いた計算式はゴミである

一生懸命問題を解こうとすると、とにかく出てくる数字を並べて計算式を作りたくなる。でも、それで問題が解ける確率は低い。
プロジェクトでも、問題が理解できないのに、業務パッケージを選ぼうとしたり、方針を決めようとしているお客さんが多くいます。

★計算式を全部書く前に筆算を始めると、たいていミスする

人間は一時に一つのことしかできない。計算に一生懸命になっていると、最後に数字を足すのを忘れて答えにしちゃったりする。
僕はこのことをプログラミングで学んだ。仕様を考えながらプログラミングするほど、自分の頭は良くない。残念ながら。
今だって、プレゼンテーションの骨子を考えてからパワーポイントを開くし、何かにアラアラのメモを書いてから文章を書く。

★答えが出たらサッと見直しをすることは、たいていペイする

チェックって大事ですよね。自分が思っているよりミスは多いから。プログラマーとして仕事を始めた時に、自分のミスの多さに唖然としたのをよく覚えている。
「大学入試の数学で、時間が余ったから丹念に計算式を見なおしていたら、最初の方で掛け算を間違えていた。あれを見つけていなかったら大学に落ちていただろうし、そしたら君は生まれていなかったのだよ」

★出来ないことにイライラしたり嘆いていると、頭が働かない

これなー、仕事している同僚を見ていて、よく思うよ。気持ちはすごく分かるんだけど、パフォーマンスがダダ下がりなんだよね。多分プライドが無駄に高いんだよ。いくら難しい仕事でも、自分ならできるはずって根拠なく思っているんだから。
小学生の時の僕は、難しい問題が解けないとギャーギャー騒ぐようなガキだった。でもそうしていてもできるようにはならない。クールに問題に向き合う姿勢って大事だ。
それを「タフ」と呼ぶ。いつでもタフになれるとは限らない。でもこのことは深く実感していなければならない。

★5分同じことをぐるぐる考えていたら、それは考えていないこと

「分からないなら、聞きなさい。せっかく横にいるんだから」と何回言っても、延々と考えている。というか、延々と考えることは実はできないから、思考停止している。
・自分の考えが進んでいないことを認識すること
・自力では解けないと悟ること
って、とても難しい。自分の状態を冷静に観察できないといけないから。

ウチの会社の新入社員には「20分ルール」が叩き込まれる。
『20分考えて仕事の仕方が分からなければ、次の5分を使って「何が分からないのか」をなるべく言語化し、分かる人に聞きに行け』
というルールだ。
もちろんウチの娘と同じように、最初はこのルールを守ることすらできない。延々考えてしまう。まあそれも修行のうちだけどね。効率は悪いよね。

★分からないことを自覚して「教えてください」といえる力が学力

学力、つまり「学ぶ力」とはテストの点とは関係がなく、
・自分には分からない
・あの人なら分かるに違いない
・「すみません、どうか教えてください」と頼む
というプロセスを経る力のことだ。

教えてと頼む人は先輩でもいいし、お客さんの時もあるし、社外の専門家でもいい。誰の力を借りてでも、問題を解決すればいいのだ。
僕の会社では「イエローフラッグを上げろ」とも言っている。

世の中の殆どの人が「勉強は仕事や生活の役に立たない」と言う。
確かに、因数分解や2次方程式を僕は仕事で使ったことはない。でも、算数を通して学ぶことって、全然別の種類のことなんじゃないだろうか。
少なくとも僕はそうだったし、娘を観察していると本当に実感する。

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新刊情報
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いや、情報ってほどのものではないんですが。
2013年秋に「業務改革の教科書」を出して以来、ボケーッと「次の本は何にしようかなー」と考えてきましたが、なんか「よっしゃ、これ書くぜ」というのを思いつかなかったんですよね。
本を書くのって、くそめんどくさい。書き上がるまでのことを考えると尻込みするくらい。だから、それを押しのけて書きたくなるようなテーマじゃないと腰が上がらない。
という訳で1年以上も何もしないで、社内向けトレーニングをゼロから2本も作ったりしてお茶を濁していた訳です。あ、もちろん本業のコンサルティングは超頑張ってたんですけど。
ですが、年末についに「うおー、これしかない」を思いつきました。2014年最後まで考えたからこそ、思いつけたようなテーマを。ここまで書いておいてそれが何かは内緒ですが、ようやく書き始めました。
出版目標は2016年1月(苦笑)。それくらいかけて、自分のなかから絞り出します。
という訳でずいぶん先走った新刊情報ですが、自分を怠けさせないために書いておきます。

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