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抽象の海に潜れ!あるいは、将来像を構想する本質的な思考法

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こないだ新入社員に「今、不足だと感じているスキルは何?」と聞いてみたら、面白い事を言っていた。

現状調査のやり方が分からない。
例えば、いまやっている帳票の現状調査の場合だと、「今、この部署で、この帳票を使っている」という事は分かりますよ、もちろん。で、帳票にどんな情報が載っているのかも分かる。例えば人件費の金額だったり、部署の名前だったり。
でも、それが分かったところで、「じゃあ、今後どいうものを作ればいい?」を考えるのにつながる気がしないんですよ。

うむ、若者よ。本質をつく、中々良い質問ではないか。
おじさんが答えて進ぜよう。
君らは今、帳票を相手に苦戦しているのだろうが、これは
「この業務、いまはこうなっているけど、今後どうしたら良い?」
「このビジネスモデル、いまはこうなっているけど、今後どうしたら良い?」
でも応用が効く話なのだよ。
・・という気分で、以下の絵を描いた。

Photo_2

彼が言うように、今の帳票を調べても、いきなり将来の帳票は考えられない。考える手がかりが何もないから。
そうではなく、一回、抽象の海に潜る必要がある。



★②抽象領域での現状調査

どういうことか。帳票の例で言えば、

この帳票がユーザーに提供している情報ってなんだっけ?

をちゃんと把握するということ。

かっこ良く言えば「その帳票が本質的に提供している価値は何か?」になるし、普通に言えば「誰が使ってる?目的は?情報と目的は合致している?」という問いになる。
それぞれの帳票だと、例えば「部門ごとの人件費が、過去と比べて増えているのか減っているのか、定点観測出来るようにする」とか。

帳票を調査する時、帳票そのものを見るのはもちろん、それを使っている人にヒアリングに行く。ちょっと机におじゃまして立ち話したりね。
ヒアリングの目的は一つしかない。「本質的な価値」を探ることだ。
だから、
「もしこの帳票がなくなったらどうします?」
「これを見て、どんなアクションを起こすんですか?」
「もし情報を半分にするなら、どれを残しますか?」
「紙じゃなくて、画面で見れればいいんですか?」
みたいな質問をする。

必ずしも帳票を無くしたいとか、情報を半分にしたいから、そういう聞き方をするのではない。本質的な価値を探り当てたいだけなのだ。
「この帳票の本質は?」と聞いたって、普通は答えてくれない。だから色んな角度で質問して、それを探り当てる必要がある。



★③抽象領域での将来構想
ここまでで現状調査は終了。
いよいよ将来どうするかを考えるのだが、この時もいきなり「この帳票のこのデータが・・」を考えてはいけない。

抽象領域で探り当てた「本質的な価値」が、今度のプロジェクトで変える必要がないのか、あるのか。あるとしたらどう変えるのか?を、やっぱり抽象的な世界で考えるのだ(図の右下の部分)。

プロジェクトをやる時は、コンセプトがあるはずだ(ない場合も多いけど、それはまた別の問題)。例えば、
・合併前の各社のバラバラな仕事のやり方を一本化する
とか
・販売店とのやり取りを完全電子化!
とか
・必要な人に、必要な情報を届ける
とか。

一種のパラダイムシフトみたいなもので、「これに従って、全てを見直すべし」というものが、プロジェクトコンセプトになる。
このコンセプトに従って、「本質的な価値」をどうすべきか、考える。

帳票の場合なら
・ペーパレスなので、画面で情報を提供する
・分析軸は、ユーザーが自由に選べるようにする
・ユーザーごとに、見ても良い情報のみを表示するようにする
などなど。



★④最後に、具体的な話に戻る
どんなにコンセプトをこねくり回しても、最後は現実の世界に戻ってこなければならない。
「だとしたら、具体的にはどんな帳票になるんだっけ?」
がここで必要な問いだ。

プロジェクトで良いコンセプトを掲げているならば、こうして抽象の海を一回潜ってから浮かんできた「将来像」は、今使っている帳票を見ながらなんとなく考えた「将来像」とは別のモノになっているはずだ。

「そう考えると、この帳票なくてもいいんじゃない?」という事もよくある。



今回は、たまたま帳票の現状分析が発端だったのでそれを例に話をしたけれど、「全社業務改革」なども、これの応用でしかない。

★プロジェクトをファシリテーションする方法のセミナーやります

「これが無償とは思えない!」
「ケンブリッジはこんなノウハウを公開していいんですか?」
「とにかく楽しかった!」
過去のアンケート用紙ではこんな声をいただいています。
過去に参加された方からの紹介でお越しいただくケースも増えてきました。

以前は毎回テーマとスピーカーを変えてやっていたのですが、このシリーズの評判が非常にいいので、最近はこのセットを何度も繰り返す形に落ち着いていますね。
水曜日の夜なので昼間に比べて学習意欲が高い方が多く、話す方も気合はいります。ほとんどの方が3回シリーズをまとめて参加されているのも特徴でしょうか。

なお、今回は大阪での開催です。
ちなみに、白川は1/23の「プロジェクト・プランニング」担当です。

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Cambridge Seminar 2013 大阪 のお知らせ
「成功するITプロジェクト ~プランニングから導入までのノウハウ教えます!~」
上流から下流にいたるITプロジェクトのステップに合わせて、プロジェクト成功のノウハウについて3回に分けてお話いたします。

■日時:
1月23日(水)19:00~ プロジェクト・プランニング
2月6日(水)19:00~  スコープ・マネジメント
2月20日(水)19:00~ プロジェクト・ファシリテーション

■会場:
ブリーゼプラザ
※四つ橋線西梅田駅、阪神梅田駅(西改札)、JR大阪駅(桜橋口)、
JR東西線北新地駅 各駅から徒歩5分以内

■申し込み:
http://www.ctp.co.jp/events/index.html

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