中途採用の難しさ
たまたま社内のミーティングで採用に関する話題がありましたので、私の個人的な考えを書いてみます。あくまでも、私が経験から考えた個人的な思いですし、業種・職種によっても違うものという前提で。
採用には大きく分けて、新卒採用と中途採用があります。新卒採用は学校を卒業して最初の就職ということで、経験者採用である中途採用とは大きく観点が異なります。当社の場合は、このところ、新卒採用はかなりの成功率で、とても優秀なメンバーが新卒できてくれています。その背景には、私をはじめとしてメンバーがブログや著書などで、当社の仕事の楽しさをアピールしていて、それに魅力を感じる学生さんが売り込みにきてくれるから、ということにつきるでしょう。
さて、難しいのは中途採用です。私は、技術者の中途採用は基本的に、「メンバーの友人・知人、あるいは、その紹介」以外はなかなか上手くいかないと感じています。背景として、当社がそもそも小さくて無名なため、優秀な人が自ら応募してこない、ということもありますが、学生さんには目に留まるのに、社会人の転職先として目に留まらないというのは、とても面白いことだと感じています。なぜ知人・友人ならうまく行くかといえば、お互いをよく知った上で考えることができるからです。
基本的に中途での技術者採用でまずうまくいかないと考えているのが、職安などでの公募です。理由はいくつかあります。とても不愉快な内容だと感じられる気もしますが、あくまでも私の経験から少しだけあげてみると、
・技術者として腕がある人なら、職を失ったとしてもすぐに声がかかるはず
・売り込めるものがあれば、ヘッドハンティングや人材斡旋業者に紹介してもらう方が良い就職先を探せるはず
という感じです。
中途採用の本当の難しさは、社会人としての経験があることだと思っています。経験があるのは良いことと思うかもしれませんが、新しい仕事にプラスになる経験と同じくらいマイナスの経験もあるはずだと考えています。そのギャップを埋めるためには、相当深いレベルでの意思疎通が必要で、それができるのが、「知人・友人・紹介」だと考えているのです。その点、新卒採用であれば、社会人としての経験がない分、素直に会社になじめるものです。
前にも書きましたが、一度正社員として採用すると、やっぱり合わないという感じに簡単に辞めてもらうことはできなくなります。仕事ぶりが思うようでなくて給与を減らすことも簡単ではありません。採用後、一人前の正社員として育てるのはとても大変です。一時的な忙しさなら、採用するのではなく、社外に委託する方がリスクが少ない、と考えるのも仕方ない状況でしょう。
先週の土曜日の夜に、私より一回りくらい先輩の方と飲みながらお話ししたのですが、知り合ったきっかけは、その方が勤務していた大手企業のシステム更新に、私が間に曾孫請けくらいの立場でご一緒したことです。非常に困難なプロジェクトで、その方とは本当に「同じ釜の飯を食う」と表現できるような感じで、プロジェクトが終わった後も長く交流を続けさせていただいています。その方は、その大手企業を退職し、友人と仕事をしたりしながら、昨年自分で起業されました。その方の言葉で考えさせられたのは、
「会社のため、と思って気持ちも時間もつぎ込んで仕事をしてきたが、自分が怪我をしたり親が大変な状態になって相談しても、まったく助けてくれないどころか、ひどい仕打ちを受けた。」
「大手に勤めていると、取引先がとても良く接してくれているように感じるが、それは自分に対してというより、大手の看板に対してだということに気がつかない人が多い。大手を辞めてはじめて本当の自分が分かる。そして、一人になっても付き合ってくれる人がどれだけいるのかが、その後の人生を左右する。」
おそらく、私の意訳が相当入っていますし、大手といっても様々ですが、大手に勤めたことがない私にとっては「なるほど」と感じることをたくさん教えていただけます。
採用の話しとずれていると感じるかもしれませんが、「【自分】には何ができるのか」をしっかり知っておくことがとても大切、ということです。大手の看板の話しは、まるで杜子春の話ですね。そして、裸の自分と親しく付き合ってくれる友人・・・というより、「親友」の大切さでしょう。そのような背景から、公募での中途採用はとても難しいと感じているのでした。