人材育成の難しさ
今日はオルタナミーティングで森戸さんによる講演「IT業界の次世代を担う人材育成」に参加しました。コンサルで講演などの仕事もされているということで、スライドも話し方も実にすばらしい講義でした。
最初はエンジニア向け人材育成の一般論的な内容から始まったので、これは苦手なタイプかな?と思ったのですが、そうは上手く行かないよね、という感じに展開し、後半は、「こういう面でいろいろと悩んでいるけど、皆さんどう?」という感じに問いかけをされ、参加者がそれぞれの経験をもとに議論する感じで、とても密度の濃い1時間でした。
いくつか私がメモを取らせていただいたポイントだけご紹介しましょう。
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「行動=知識×経験」
最近の若者はインターネットの影響もあり、「知識」はかなり豊富。しかし知識だけでは仕事は上手く行かず、上司・先輩は経験を伝授しなければならないが、一般的には若者にとって単なる昔話と嫌われてしまう。
今リアルタイムで何が起きているのかを見せながら経験を語るようなやり方の工夫が必要。
「付加価値を作るのは経営者ではなく社員」
かつてはコスト優先という企業が多かったが、今は付加価値で勝負しないとならない。付加価値を生み出すのは社員一人一人。
「エンジニアは、技術力に加え、コミュニケーション力と察知力がないとダメ」
いまどき技術力、例えばITであればJavaでプログラムが組めるとかいうのは当たり前。その技術を使って何ができるかがポイント。そのためには相手が何を困っているのかを聞き出すコミュニケーション力と察知力がないとダメ。それを企業は教育しなければならない。ちなみにコミュニケーション力とは喋る力ではなく、聞き出す力。
「問いかけ1」
若者は技術力はある程度持っているものの、コミュニケーション力、それ以前に人間関係を苦手とする人が多い。それをどう指導するかは悩みどころ。一方、人間関係などは苦手でも技術は光るものがある若者の場合、それを伸ばしてあげるべきか、それよりコミュニケーションを鍛えるか、皆さんどう?
→私の意見:技術で食うのはどのくらい大変かを見せる。いわゆる職人レベルのエンジニアを見せ、そのレベルを目指せるかどうかを考えさせ、そこまで無理と思うのであればコミュニケーション力など総合的な指導もする感じで判断している。本当に技術で光る人ももちろんいるので、無理矢理コミュニケーション力などを指摘してつぶすのはもったえない。しかし、多くの若者が考えているほど職人レベルは易しいものではないということも感じさせないとダメ。
「問いかけ2」
技術力・コミュニケーション力・察知力など全体的に、経験の浅い若者は自分で「ここまでやれば良いだろう」という閾値を決めてしまっているが、それはほとんどの場合要求レベルより低い。それを引き上げるためにはどのように指導していくのがよいか?
→私の意見:指導を聞かないメンバーは自分の考えが固まってしまっている。上司がいくら言っても無駄。私はそういうメンバーには自分で仕事を取りに行かせる。仕事を取る大変さ、お客に満足してもらうというのはどういうレベルかを、自ら肌で感じさせる。痛い目・苦しい目にあってみないと本当のレベルは自覚できない。
→参加者からの他の意見:社内で目標となるような人を設定し、その人を目指させる。でも、特に技術力で近くに尊敬できるような対象がいるのか?優れた技術者は?と若者に聞いても海外の人の名前しか出てこない。日本の企業はスーパースターを作りたがらないし、技術も個人も表に出さない。アカデミック系の人はビジネスに絡みたがらない。←このあたりは私自身のテーマでもある、技術者(私の場合特にプログラマー)が活き活きと仕事できる業界にしたいという思いと同じ。やらされ感の強い仕事ばかりでは技術者が積極的に活躍せず、目標の対象にもなりにくい。
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私も1月末にリーダーを目指すクラスを対象に講演をするため、今日の講演・議論はとても刺激を受けました。森戸さんの講義のうまさはとてもすぐに真似できませんが、あらためて皆さん共通の悩みや難しさを実感できました。森戸さんの講義のうまさのポイントは、
・大きな通る声
・聞き手の反応を見ながら、話の展開のうまさ
・聞き手を参加させる
というあたりだったと私は感じました。スライドはとてもたくさん用意されていましたが、実際は数ページを使っただけで、後は場の雰囲気と議論に合わせて進行されていて、さすが慣れているな、という感じでした。
褒めてばかりだとあやしい(?)感じもするので、一つだけ話し方で気になった点が、「子」という呼び方を使われていた点です。「若い子」「新入社員の子」とか言う感じなのですが、以前、社内の会議でメンバーが「面接に来た子は・・・」という感じに報告した際に、会長が、「仕事で相手を下に見るような子という呼び方はやめなさい」と叱った際に私も気をつけるようにしています。この1点以外は非の打ち所がないくらい、すばらしい講演でした。
明日、人間ドックのため、懇親会に参加できなかったのがとても残念・・・。