@ITの「SaaSにできること、できないこと」というコラムが的を射ていてわかりやすい。コラムの中でSaaSのメリットとして、「初期投資が少ない」「バージョン管理が楽」「運用コストが削減できる」を挙げていたが、個人的にはこれに加えて「辞める決断がし易い」というのも強調したい。

 昨今のシステムは複雑化大規模化してますます開発に長い時間と多額のコストがかかる。この開発コストは会計上は当然投資勘定に組み入れられて減価償却される。実はこの会計処理がくせ者で、導入したシステムが当初狙った効果を発揮できなかったり、経営環境が変わってシステムの目的や位置づけが変わってしまったときも、簡単にシステムを止めたり作り変えたり出来ない足かせになる事がある。ニーズや状況に合ってないシステムを無理矢理使い続けて現場が疲弊させることに繋がる。
 またCRM等の分野ではそもそも顧客管理をシステム上で共有化するというコンセプト自体が自社の組織風土になじむかどうかが判らないとか、情報系のシステムの場合は導入してみないとシステムの利用率が見えないなんてケースもある。こういう場合に、SaaS形式でとりあえず試して風土に合わなかったり利用者が少なくて効果が小さいのであればシステム導入を見送るというやり方は十分にあるだろう。

 ついでなので欠点にも一項目書き足しておこう。SaaSは「長く使う場合はコスト高」になる。SaaS提供者の値付けにもよるが通常2~3年利用すると使用料は構築料より高くなる。SaaSで提供されるシステムは常にバージョンアップして沢山の機能を持っているので、イチから作れと膨大なコストがかかるという反論もあるかもしれないが、私の経験から言って一般にSaaSで提供されている機能を全て使うユーザは居ない。使う機能だけに絞ればそれを自社に使いやすいインターフェースへとアレンジするコストを含めてもパッケージ購入か自社開発のほうが安価になる事は多い。
 先日JUASから基幹システムの寿命の調査結果が発表されていたが、寿命が10年を超えそうなシステムをSaaSで使うのはあまり感心しない。

 さっきの「辞めやすい」とも被るが、急ぐ場合や当面を凌ぎたい局面でSaaSモデルを採用しても、時期が来たらそのパッケージをそのまま買い取って自社内に設置したサーバで自分たちで運営する。というようなハイブリッドならぬ進展的使い分けは、現実的でお薦めしやすい。実際最近私がSaaS業者を評価する際には、パッケージ版も販売しておりそれを後で購入して移行できるというパスの有無を重要視する事が多い。

 最後に蛇足だが、以前「SaaSの阻害要因はタンス預金信奉」というのを見たがこれはちょっと言い過ぎだろう。こういう人には「貴方はもう現金は持ち歩かないのですね」と問いたい。そこまで言うなら年中現金を持たずにクレジットカードと電子マネーだけで生活して欲しいものだ。端末機が無いとかネットが繋がらないという理由で、お金を払うのを待って貰えるなら別だがそんなわけはない。今の時点では、SaaS事業者の都合やトラブルで自社のコアビジネスの提供が出来なくなるような自体は絶対に避けるべきだ。

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吉川 日出行

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