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人力検索・Q&Aコミュニティ について(1)

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 Web2.0の盛り上がりと共にソーシャルメディア(ソーシャルツールとかソーシャルアプリケーションとも呼ぶようだ)が注目されている。そのなかの人力検索(ソーシャルサーチ)について、確かこのブログではまだ書いていなかったので。

 最近のインターネットでは、OKWave、教えて!Goo、Yahoo知恵袋!といった人力検索が一定の評価とポジションを得ている。はてなもそもそもは人力検索から出発したサービスだ。

 この人力検索は企業内ではQ&Aコミュニティと呼ばれるが、このQ&Aコミュニティが2007年問題の解決施策のひとつとして注目されている。組織の中で業務遂行中にわからないことや疑問に思ったことを社内の専用システムに書き込むと社内の各所にいるエキスパートが悩みや疑問に答えてくれるというシステムが、熟練技術者や経験豊富な先達からのノウハウ継承に利用できるのではないかというのが再注目の理由である。よく一言でノウハウ継承と言うがこれが非常に難しい。そもそも何がノウハウなのかということが曖昧だから、定年間近な人はノウハウを出せと言われても何を出せばよいのかわからない。ところがこれを質問形式で「こういう時にどうすればよいのですか?」とか「○○ができなくて困っています」という風に聞かれると案外自分の持っている知識が出しやすくなるのだ。
 人から聞かれた瞬間に初めて自分がノウハウやテクニックを持っていることに気がついた経験は誰にでもあるはずだ。

 Q&Aコミュニティのベースはこれは別に新しい仕組みでも何でもない。企業における人材教育の手法にOJTがあるが、新人はこのOJTの中でわからないことを先輩から教えてもらってノウハウや知識を身につけてきたはずである。ところが昨今の企業には余裕がなくなって手厚いOJTが実施できなくなったり、新人に対する先輩の数が以前よりも相対的に減っている。それにより質問をする機会や教えてもらう人との会話が減ってきている。Q&Aコミュニティはこれを補完するものとして期待されている。

 最近ではイントラブログや企業内SNSを使って、Q&Aコミュニティを実現しようということも言われている。確かにこうした手軽に情報発信できるツールや双方向コミュニケーションを支援するツールの一部の機能を使ってQ&Aを実装することも可能だ。
 しかしもしこれまでに、フォーラムや掲示板といった双方向性のツールを有効に活用したり、ワイガヤといったシステム以外でコミュニケーションのベースとなる風土醸成に取り組んできた企業以外には、このアプローチはお薦めしない。

 イントラブログや企業内SNSは、コミュニティ初心者にはちょっとハードルが高い一面もあるからだ。日記を書けと言われても何を書いてよいのかわからないという話は良く書く、なんでも書いて良いと言われると何も書けばよいのかわからないという意見もある。特に2007年問題などでターゲットにする高年齢層には、「自分の事を自慢話的に晒し出すのはみっともない」という意見の方もいる。何よりも「きっかけ」がないのにノウハウや知恵を頭から絞り出すのは初心者には難しい。
 Q&Aコミュニティに特化したシステムは、質問が投げかけられると過去のデータベースやKnowWhoデータベースを元に適当な回答候補者を捜して回答要請メールを送るといった支援機能も実装している。聞かれることや相談されることは答えるきっかけになりやすいし、相手がいるほうが頭の中の暗黙知を形式化しやすい。それに、困っている人を助けるのは同じ組織に所属する人にとっては当然のことだから参加意欲も高まりやすい。インターネットでさえQ&Aコミュニティで回答意欲を持つ人の割合は7割に達するといわれる。

 だから私は、コミュニティ初心者企業の場合は、まずQ&Aコミュニティの実装をお薦めする。初心者企業は、場内(Q&Aコミュニティ)で慣らし運転してからステップアップすれば良いし、ベテラン企業はいきなり路上(イントラブログや社内SNS)から入れば良い。企業の風土や過去の経緯によって道順は違うのだ。

 「企業内の会話の多くは質問形式で行われる」という指摘もある。Q&Aコミュニティ(人力検索)は単純だが知識の表出化ツールとしては大きな力を秘めている。
(続く)

===2007/1/22 AM タイトルおよび本文を一部変更

 ソーシャルサーチ=人力検索が定説になっているわけではなく、一部ではソーシャルサーチという言葉を他の意味で使ってる例があったので、表記法をソーシャルサーチ(人力検索)から人力検索(ソーシャルサーチ)に修正。

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