先日ARMはGPUであるMali-T658を発表しました。まだ製品が出ていませんがMali-T604の約4倍の性能を持ち、GALAXY SⅡで搭載されているMali-400の10倍と言われています。

ARMはCPUだけではなく、GPUも手がけています。ARMはどのパフォーマンスレベルを目指しているのでしょうか。最近(2001年以降)の重要そうな発表を調べてみました。

2001.10 ARM v6
2002.10 ARM1136J(F)-S(1.25 DMIPS/MHz)
2003.06 AMBA 3.0
2003.10 ARM1156T2(F)-S(1.54DMIPS/MHz)
2004.05 ARM11 MPCore(1.25DMIPS/MHz)
2004.10 ARM1176J(F)-S(1.25DMIPS/MHz)
2005.03 ARM v7
2005.10 Cortex-A8(2.0 DMIPS/MHz)
2006.07 Falanx Microsystems買収
2007.02 Mali-200(275 M pix/s)
2007.10 Cortex-A9(2.5 DMIPS/MHz)
2009.06 Mali-400 MP(1.1 Gpix/s)
2009.11 Cortex-A5(1.57 DMIPS/MHz)
2010.03 AMBA 4.0
2010.09 Cortex-A15(3.5 DMIPS/MHz)
2010.11 Mali-T604
2011.06 AMBA 4 ACE
2011.10 Cortex-A7(1.9DMIPS/MHz)
2011.10 ARMv8-A
2011.11 Mali-T658

Mali-300はいつ発表されたのはわかりませんでした(調べたのですが...)。CPUだけではなく、GPUもバスも一緒にアップデートしています。

上の年表を見ているとCortex-A8あたりからARMは方針を大きく変えたように見えます。

ARM11のシングルコアのサイズは2平方mm以下でした。ですが、Cortex-A8は65nmで4平方mm以下、Cortex-A9は40nmで6.7平方mmと巨大化しました。CPUはプロセスの進化でシュリンクできるので、スタート時の大きさはあまり意味がありません。ですがCortex-A8、A9、A15は世代毎に製造されているので、サイズの縮小化はないパターンがありそうです(。TIのOMAPはロードマップを見るとA9は40nm以外作られない感じに見える)。

それだけ大型化=高性能化にシフトしたと言えます。また、実質はCortex-A9からマルチコアが普及し始めました。これでさらに高性能化を実現しています。

2012年に登場するCortex-A15は、さらに高性能化されます。現在のところ高性能だと言われているGalaxy Nexusに搭載されているCPUはTIのOMAP4460のデュアルコアの1.2GHzと言われています。2012年には2.0GHzのCortex-A15は約2.3倍もの高性能版が出ることになります(予定通りでればの話ですが)。

また、GPUメーカも買収して高性能なGPUの設計を行い、本格的なヘテロジニアスマルチコアも実現できます。2011年にPC向けのCPUも本格的なGPU(CPUに負けない)を搭載し始めたため、ほぼトレンドに追随したことになります(Mali-T604は2012年に登場予定)。

ARMは小型のデバイスではなくもっと大き目のデバイス(メディアタブレットやノートPCの様なクラムシェル型)をCortex-A8頃に目指したような気がします。Windows 8もその延長線上です。

Intelが現在のAtomの原型を発表したのは2007.04でした(計画自体はもっと前にあったと思いますが)。Intelはこれで組み込み系及び省電力カテゴリへの進出を発表しました。Cortex-A8は2005年ですから、ARMの上位デバイスに舵を切ったのはそれよりも早かったのかも知れません。

ARMが高性能化に大きく振りましたが、スマートフォン市場拡大及びメディアタブレットの立ち上がりとちょうどマッチングしたことはARMは幸運だったでしょう。TegraやAppleのA5を見ているとスマートフォンにちょっと入れられるCPUでもメディアタブレットには搭載できるところも良かったです。

Windows 8搭載の交渉の主導はMicrosoftなのかARMなのか分かりませんが、ARM躍進の一つになることは確かです。3DMarkのベンチで有名なFuturemarkがWindows 8向けに3DMarkを発表しましたが、x86とARM両方に対応するようです。これはARM版Windows 8にゲーム需要を満たすことが出来る性能及び市場があると予想できます。

ARMはWindows 8の登場でモバイルデバイスCPUメーカからPCのCPUメーカにジョブチェンジが出来そうです。最初はメディアタブレット系列だけだと思いますが、多くのメーカが参加するため、ノートPC型も出してくれるのではないかと思います(いろいろと契約があるからな...ないかな)。

また、ARMにはCortex-A7を使用したbig.LITTLE Processingと呼ばれる特殊な省電力モードも持ったり、安価な省電力のCPUも継続して開発をしています。前者はx86では到底かなわない省電力を維持できるでしょう。また、後者はスマートフォンが一般化すれば廉価なモデルが必要なります。このときに製品ラインナップが無ければ他のメーカに足元がすくわれます。全方位的に対応している感じもしますが、POWERやMIPS等の組み込みCPUアーキテクチャもARMに続きたいでしょうから、隙を見せるわけにはいかないところです。

2012年にはWindows 8の登場でARMが高性能化に向けた方針が本格的に目が出そうですが、それだけでは終わらないと思います。もしかするとx86のシェアを予想よりも多く奪うシナリオが発動するのかも知れませんし、サーバ市場でPOWERやSPARCよりも地位が高くなるかも知れません。ARMはIPを売るメーカのため発表と製品がでるまでのタイムラグが大きいため、ロードマップを見ているとARMが目指す方向性が見えやすいと思います。

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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